中西雅之著『なぜあの人とは話が通じないのか?-非・論理コミュニケーションン』2005年6月20日、光文社、770円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その66

中西雅之著『なぜあの人とは話が通じないのか?-非・論理コミュニケーションン』2005年6月20日、光文社、770円

この手の本は苦手で、あまり読んだことがなかった。研修に際し、必要に迫られて読みました。やはり、肌に合わず読み進めるのがつらかったです。

著者の略歴は、次の通り。

「1953年東京都生まれ。国際基暼教大学卒業後、渡米。ヴァージ二こア大学大学院で修士号。カンザス大学で博士号(Ph.D.)を取得。カンザス州立大学専任粛師、共立女子大学専任講師を経て、現在。津田塾大学英文学科コミュニケーションコース教授。専門は、対人コミュニケーション、異文化間コミュニケーション。著書に「人間関係を学ぶための11章 インターパーソナル・コミュニケーションへの招待」(くろしお出版)がある。」(奥付より)

チンパンジーが記録したい箇所の抜粋は、次の通りです。

「かの有名な古代ギリシヤの哲学者アリストテレスは、説得術をアート(芸術)ととらえ、「ロゴス(論理的訴求)」「パトス(感情的訴求)、そして「エトス(精神的訴求)の三つの要素が重要であると説いている。

 「ロゴス」は説得力ある言葉を使用し、論理的根拠を示しながら道理にかなったメッセージを組み立て、相手を納得させる手法である。これには帰納法と演繹法の二つのパターンがある。

 帰納法とは、「業界大手のうちの半数以上が実際にPR予算を三〇~五〇%増やしている。だから、わが社もそうすべきだ」と、十分な実証データをもとに自らの主張の正しさを訴えるもの。一方、演繹法とは、一般に正しいとみなされている大前提をまず示し、「業界大手たるもの、PR予算をケチるべきではない。わが社も業界大手の一社である。ゆえに、わが社もPR予算を増やすべきだ」と「三段論法」で攻めるものである。

 「パトス」は、いわゆる「一生のお願い」やその他の泣き落とし戦術に見られるように、人間の感情面に強くアピールすることで目的を達成する。「エトス」は、倫理観、道徳観といった、メッセージの送り手の持つ人徳の部分を強調することで、影響力を及ぼす。

 人と人とのつながりを重視する日本の文化・社会では、まずパトスが重視され、次にエトス、最後にロゴスの順番になる。それと対照的に欧米では、まずロゴス、次にエトス、最後にパトスとなる。

 もちろん個人差はあるが、日本人は、第二章で触れたように「友達なら私の頼みをきいてくれるよね」とまず人間関係(甘え)を強調しておいて、さらに同情や共感といった相手の感情而に訴えかける。理屈が通らなければ説得されない欧米人との間でコミュニケーションーギャップが起きるのは、無理のないことなのである。

 エトスについてもうすこし説明を加えよう。
 古典的な意味では、エトスとはメッセージの送り手の示す精神性の高さを意味し、道徳観や倫理観、人徳といった要素に裏付けられたものである。

 近年になって、このエトスは、米国イェール大学の研究者たちによって「情報ソースの信憑性」という概念に進化し、情報ソース、つまりメッセージの送り手を受け手側がどれくらい信川するかという尺度を示すようになった。

 情報ソースとしての信憑性の高い人というのは「一般的な意味で信用できるという印象を与え、当該トピックについてコメントする資格のある専門家であるとともに、ダイナミックなコミュニケーションスタイルを持った善意の人」と要約することができる。

 ただし、これは欧米の場合であって、日木ではちょっと違った傾向が見られる。特に専門性の要素に替わるものとして、「タレント性」「カリスマ性」といった情緒的要素が重視される傾向が強い。(第四章パワーと人間操縦法、P85~87)

次の個所は、ある特定の人を思い出しながら読みました。

「自分の話を一生懸命聞いてくれる人を非常に竒く評価する傾向があるのは、「相手に自分の気持ちや考えをわかってもらいたい」という人間の基本的な欲求を満たしてくれるからに他ならない。

なにを言っても聞く耳を持たない人間は評価も低いし、敬遠される。営業成績のよいベテラン営業マンは「営業の基本はまず顧客の話に耳を傾けること」「たとえそれが愚痴や不満であっても、親身になって顧客の話を聞く姿勢を見せること」が長い目で見れば取引先との信頼関係を築き、営業成績をアップさせるコツだということを、経験から学習している。」(第七章リスエング_-「聞く」と「聴く」、P143)

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