『JAの会計実務と監査~会計処理・開示実務編~』2020年4月30日、編著者みのり監査人、㈱経済法令研究会、4,400円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その57

『JAの会計実務と監査~会計処理・開示実務編~』2020年4月30日、編著者みのり監査人、㈱経済法令研究会、4,400円

久しぶりに会計の本を手にしています。事業方式が変わり、それにつれて会計処理が変わっていることに気づいたり勉強になりました。

とくに、会計士監査の導入で農業関係施設等の多くの共同利用施設等が減損に該当し、大変なことになると言われてきたが、「共用資産とは、~一般事業会社では本社や福利厚生施設が該当する。JJAにおいては、当該施設のキャッシュ・フローのみによる回収を考えていない農業関係施設等の共同利用施設等が該当する。この考え方は、JAの事業は組合員の利用に資することを目的とした非営利事業であることに由来し、J A独自の考え方といえよう。」という記述に接したときは、良かったなと思いましたよ。

いずれにせよ、会計監査人とディスカッションし、一定の合意が必要なことでしょうがね。

いつものように、チンパンジーが勉強になった点を抜粋しておきます。

「2018年4月より共済証書貸付制度の見直しが行われている。JAは全共連と金銭消費貸借契約を締結し、同じ条件で契約者と金銭消費貸借契約を締結していたが、見直し後は全共連・JAと契約者の閧で金銭消費貸借契約を締結する形態に変更された。これに伴い、貸付金は全共連から契約者の貯金口座に直接振り込まれるため、JAへの経理処理、勘定科目の使用がなくなる。また、共済担保貸付など、他の債権がある場合、全共連からJAに一旦振り込まれた後、JAから契約者の貯金口座に振り込まれるが、この場合でも計上される勘定科目は共済資金勘定のみであり、共済貸付金は計上されない。」(第2編会計処理実務 第2章共済事業資産・負債、108頁)

「共済金は、全共連から契約者の貯金口座に直接振り込まれ、共済金に係る仕訳はJAにおいては発生しない。また現在満期返戻金も、共済担保貸付などに対応する質権が設定されている場合を除いて、全共連から契約者の貯金口座に直接振り込まれる。

共済資金は、試算表(JAの一般会計)の勘定残高と全共連統一の共済システム上の残高が一致しているかどうか、また、共済システム上の保留がその都度解消されているかの管理が重要であり、共済事業では共済システムから出力される貸借不突合契約リストや収納管理保留一覧表などが用いられる。

共済金、満期返戻金などが原則全共連から契約者に振り込まれる現状においては、共済掛金の入金、滞留管理理が主な業務となる。

決算時の会計処理(未経過共済付加収入) 決算において、共済契約に係る決算時点の責任準備金(付加収入のうち翌期に繰り越すべき金額)を処理するものであり、決算時計上すべき額は公共連から共済システムを通じて提供される。翌期首において振戻処理を行う。

なお、共済掛金を受領するまで共済付加収入は計上されない原則であり、期末において未収となっている契約の未経過共済付加収入は計上されない。」(第2編会計処理実務 第2章共済事業資産・負債、110~111頁)

「賃貸不動産 賃貸不動産については、原則として、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として取り扱う。賃貸物件がいくつかある場合は、それぞれの物件ごとにクルーピンクする。

①農協法上賃貸可能な資産 Aコープ事業や燃料、葬祭事業などを行う子会社等・系統関連法人などに対する固定資産の賃貸は、JAが行う事業の付帯事業として位置づけられ、農協法上も賃貸可能と考えられている。農協法上可能な賃貸資産の場介は、一般資産と|司様に、減損の兆候を識別し、認識の判定、測定と段階を進むことになる。

認識の判定において、将来割引前キャッシュ・フローの見積期間は、資産グループの中の主要な資産の経済的残存使用年数または20年のいずれか短いほうとされており、建物を賃貸している場合は、その賃貸期間のみならず、建物の耐用年数によって制約を受けることに留意する必要がある。

②)農協法上賃貸制限される一時賃貸資産 農協法上、賃貸できない資産の場合は業務外固定資産となり、早期処分が前提となるので遊休資産に準じて、減損の兆候に該当することに留意が必要である。」(第2編会計処理実務 第5章固定資産、173頁)

「減損会計における共用資産の取り扱い 共用資産とは 「減損会計基準」によれば、共用資産とは、複数の資産または資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産のうち、のれん以外のものをいう。例えば、全社的な将来キャッシュ・フローの生成に寄与する本社の建物、試験研究施設、福利厚生施設などが考えられる。一般事業会社では本社や福利厚生施設が該当する。JAにおいてはそれらに加えて、当該施設のキャッシュ・フローのみによる回収を考えていない農業関係施設等の共同利用施設等が該当する。この考え方は、JAの事業は組合員の利用に資することを目的とした非営利事業であることに由来し、J A独自の考え方といえよう。

また、JA全体の共用資産でなくても、複数の資産または資産グループを含む部門全体の将来キャッシュ・フローの生成に寄与している資産は、当該部門の共用資産となる。

JA適用の留意点 固定資産減損会計をJAに適用する場合に留意する必要がある点としては、まず、JΛの事業は一般事業会社と異なり、利益獲得のみを目的としない非営利事業であるということである。すなわち、JAの事業は、組合員の事業に資することを本来的な目的としている。また、農業関係や農業従事者の生活関係の一部の施設は組合員の利用する共同利用施設となっている。

また、こうした共同利用施設という性格から、収益性が低くてもあえて取得する場合や補助金を受けている場合など自由に撤退できない場合がある。JAにおいて、このような共同利用施設は、利用料を徴収していたとしても、必ずしも当該共同利用施設の利用料で固定資産の収得価額を回収するという考え方ではなく、他事業を含めた経営全体として回収を考えているということになる(「農協会計研究報告」Q4)。

このため、減損会計を適川する場合、共同利用施設については、「共用資産」として、他の複数の岡定資産グループを含めたより大きな単位で減損損失の兆候の判定・認識・測定を行うことが必要な場合がある。例えば、農業関連施設(育苗施設、カントリーエレベーター等、一定の収益を前提とした施設を含む)や地域コミュニティ施設、生活関連施設等、JAにおいて当該施設のキャッシュ・フローのみによる回収を考えていない共同利用施設等については、複数の固定資産グループのキャッシュ・フローの生成に寄与する[共用資産]として考えることが妥当な場合もある。

複数の固定資産グループのキャッシュ・フローの生成に寄与する「共用資産」については、当該施設が直接的にはキャッシュ・フローを生み出さない場合やキャッシュ・フローを生み出すとしても当該施設の帳簿価額を回収できるほどではない場合であっても、組合員である農家等の利用に供していることを月的としている限り、減損会計の適用においては、JAの他の資産から生み出されるキャッシュ・フローを含めて当該施設の帳簿価額が回収されると考えることができることから、結果的に減損処理を行わなければならない場合は限られてくると考えられる。」(第2編会計処理実務 第5章固定資産、196~198頁)

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