又吉栄喜著『ギンネム屋敷』1981年1月11日、集英社、212頁、858円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その131
又吉栄喜著『ギンネム屋敷』1981年1月11日、集英社、212頁、858円
「すばる文学賞受賞作」という歌う文句に惹かれて手に取りました。又吉さんの本です。
沖縄の戦後直後の雰囲気がよく伝わりました。
著者は、次の通りです。出版当時ですから40年以上前のプロフィールです。
「またよし・えいき一九四七年七月、浦添市のテント幕舎で出生。仲西中学校、首里高校ではバレーのアタッカー。琉球大学では歴史を専攻。ゆえに「おまえの作品はフレームの大きさが取りえ」(友人)と言われたのかもしれない。就職難で無職のころ、友人に触発されて創作を始めたが、同人誌とは無縁。梶井基次郎、ポーなどを愛読。米資系のバヤリースージュースが催したクリスマスーパーティーが原体験(?) 現在、浦添市議会事務局勤務。」(表紙カバー帯より)
二人の著名な方が帯に推薦文を付けられています。
「井上光晴-「ギンネム屋敷」の中に胚胎する狂気はただものではない。奇妙な独白をつづける人間のひとりひとりが、白塗りの面をかふったかに見え、それでいて泥臭い土の臭いを身につけているのだ。沖縄の地を生の根源とした想像力を、縦横に駆使しながら、荒れた海辺を踏む作者の足どりは、何かもの悲しい。
黒井千次―沖縄を舞台に、日本人、朝鮮人、アメリカ人、と幾種もの人々が登場し、そこに戦争の記憶が粘りついている、一種独得の国際感覚に支えられた作品である。説明を排した文章には力があり、しばらく読み進んでから前の事件がぼんやり浮かび上がってくる効果は、作品に奥付きを与えている。」(表紙カバー帯より)