1.日 時  令和5324日(金) 1330分~1635

2.場 所 エッサム神田ホール2号館 6階(2-602)会議室(受け付けは13時より)

〒101-0047東京都千代田区内神田3-24-5

 JR神田駅 東口・北口・西口 徒歩2

TEL 03-3254-8787 FAX 03-3254-8808
         https://www.essam.co.jp/hall/access/ 

●実参加とズーム(オンライン)・録画方式の併用

3.参加者  主にJA役職員    

4.日 程  

時 間内 容
1330(司会) 東京農業大学 名誉教授 白石 正彦
13時30分~13時35分   (開会挨拶) 新世紀JA研究会代表  JA菊池(熊本県)  代表理事組合長  三角 修
1335分~1340「解 題」 新世紀JA研究会 常任幹事 福間 莞爾
1340分~1425JA全農 令和5年度事業計画(案)の概要~中期計画からの更新を中心として」 JA全農 経営企画部 次長 遠藤 康行 氏
1425分~1435質疑
1435分~1520JA経済事業の取り組み」 JA邑楽館林 代表理事組合長 阿部 裕幸 氏
1520分~1530休憩
1530分~1615JAの営農・経済事業戦略」 公認会計士  甲斐野 新一郎 氏
1615分~1625質疑
1625分~1635総合質疑
1635閉会

セミナーの録画

「JA全農 令和5年度事業計画(案)の概要~中期計画からの更新を中心として」 JA全農 経営企画部 次長 遠藤 康行 氏

講演資料

「JA経済事業の取り組み」 JA邑楽館林 代表理事組合長 阿部 裕幸 氏

講演要旨

 H21年の広域合併から5年が経ったH26年の12月に22支所を10支所に再編統合する新店舗づくりビジョン(支所再編計画)と地域農業の振興と4つの営農経済拠点を構築することをめざした新農業ビジョンを掲げてH27年から取り組をスタートした。新農業ビジョンでは、基幹作物キュウリをはじめとする既存13品目の活性化と伸張や加工向け露地野菜(キャベツ・レタス)など戦略作物の導入育成を掲げて取り組み始めました。

 JA邑楽館林の販売品販売高はここ数年160億円前後の販売高で、園芸部門の販売額、約97億円うち46億円が施設キュウリのJAです。園芸品の共販率は9割を超え、市場出荷先は京浜市場の19市場を中心に北海道から京阪神まで48市場に出荷しています。また、米麦は36億円を令和3年度に販売しました。コロナ以前には米麦の販売高は50億円を超すこともありましたが、コロナ禍で外食需要等の落ち込みが影響した形となりました。JA邑楽館林の米の販売は業務用・加工用米を軸に販売しています。米麦販売については最終実需者が見える独自の販売ルートを確立し、リスク管理を行い有利販売に努めいています。米麦二毛作生産者には、麦を表作に裏作には加工用米や飼料用米を作付けするよう呼びかけ米政策に沿った営農に取組みをすることで交付金を受け取り収入確保につながるように指導しています。

 加工用露地野菜の振興については、JA管内の大手加工食品会社と提携した取り組みを始め、平成28年にはキャベツ栽培の面積が20haだったのに対し、令和4年には82haへ拡大しました。カット野菜向けキャベツは出荷用段ボールなどを用意する必要がなく、生産コスト低減に加え、定額で買い取りのため、安定収入につながっています。平成28年と比較すると栽培面積は4倍になり、作業効率を高めるためにキャベツ収穫機が平成29年からは導入され若手農業法人などが収穫作業の機械化に取り組んでいます。面積あたり農業生産額の増加は全国でも高く「稼ぐ農地」へと転換させることができました。

 当JAでは地域農業の振興と農畜産物の生産拡大・維持を図る目的に独自支援策を打ち出し、3年目となります。地域農業の旗振りである新農業ビジョンでは生産者をセグメントし、各層に合せた取り組みの具体化を模索してきました。中でも国や県の補助事業に該当とならない中小規模の農業者をターゲットにした施策として「やる気ある農家支援事業」を考案。助成項目は施設ハウス建設やハウス関連機器の購入に対する支援、米麦用農業機械の購入に対する支援、畜産衛生防疫や暑熱対策対する機器購入支援。合計で1000万円以内。申請要件は①JA管内の組合員で規模拡大・維持を検討している人。②生産に必要な技術を有し、健全な経営を行っている人。③国・県の補助事業に該当となったものは助成対象から除外となるが市町の助成事業は重複可とするなどとしています。1月中旬から2月末を申請期間として3月中旬に審査会を開き採択しています。事業実績は令和3年度には51件、総事業費107百万円、助成額974万円の支援、令和4年度46件、総事業費82百万円、助成額958万円。令和5年度39件、総事業費87百万円、助成額1,000万円となっています。この事業の副産物としては、農業融資の伸張が各年度3000万円程度増加したことが挙げられます。

 当JAでは、価格高騰が続く飼料・肥料・営農用A重油の価格高支援として、供給高に応じて資材購入費の一部還元する独自の支援策(総額4000万円)や国の「肥料価格高騰対策事業」の申し込み支援するためJA全職員で対象農家約2300件へ訪問し、事業の内容を分かりやすく説明し、JAで作成した調査票や意向確認書、申請に必要な化学肥料低減計画書の記入などを促し、1495件、総額5700万円の交付金申請の手伝いをしました。農家を一堂に集めた説明会を開くなどし、事業の概要や申請方法を周知するJAは多いなか、農家の負担軽減や書類に不備の無い円滑な申請につなげるために農家個別訪問を行いました。また、生産コストの低減支援については肥料・農薬の予約購入に割引等を行い、水稲栽培では肥料の予約率は87%となりました。

 地域の活性化の取り組みとしては、大型直売所2号店「でんえんマルシェ」を令和4年12月に開設し、少量多品目の生産者支援と地域消費者への農産物の提供により、地域活性とJAのランドマークになる取り組みとして今後も注力していきます。

 当JAの営農・経済事業の取り組みについては、新農業ビジョンを軸に不断の自己改革を実践してまいりました。農業者の所得増大や農業生産の拡大を目途に、生産者に向き合い、今できる支援に取り組んでいます。今後も組合員・生産者との対話運動を継続・拡充させて地域営農を支えてまいります。

講演資料

「JAの営農・経済事業戦略」 公認会計士  甲斐野 新一郎 氏

講演要旨

1.事業戦略の検討手法

 事業戦略はJAの経営資源をどのような分野に投下していくか、事業領域をどのように考えるかがポイントになります。このような検討にあたっては、SWOT分析やクロスSWOT分析が有効になります。外部環境とJAの内部環境を分析して、市場自体が拡大して競争が少なく、JAの強みが発揮できる分野に経営資源を投下していくことになります。このような事業戦略の考え方は営農・経済事業の場合も同様です。

しかし、営農関係事業の場合、JAは市場の参加者という立場ではなく、地域農業を担う立場ですし、競合する業者に対しても圧倒的に大きな存在になります。このため、視野を広げて日本農業や地域農業の全体の課題をとらえてそこから事業戦略を考えていくことにします。

2.日本農業をめぐる課題

 食料・農業・農村基本法の検討が進んでいますが、基本法部会などの議論を見ると、食料安全保障などの「食料」が先になり、「農業」はその次になっているような感じを受けます。日本農業には様々な課題がありますが、個人的には担い手すなわち農業労働力の問題が最も大きいと思います。

 基本法部会でも第4回目に議論されましたが、農業の担い手である基幹的農業従事者は高齢化により10年で5割近く減少します。また、雇用労働による法人経営は他産業に比べ財務基盤が弱く、収益性が低いことが課題とされました。

 農業労働力が減少しても農業生産を維持していくためには、農業の労働生産性を高める必要があります。水田営農などの土地利用型農業や露地野菜、加工畜産といった分野では、規模拡大が有効になります。施設園芸では環境制御による単収の向上、果樹では高級化が有効だと考えられます。

 水田農業の規模拡大を支えるのは水田受託組織です。受託組織は多くの地域で転作の受託から発展したものが多く、法人化した組織の財務を見ると転作への依存度が高くなっています。このような受託組織が抱えている最大の問題は水田活性化対策の見直しです。見直しは一言でいうと「転作助成金が出ないもと水田(畑)」が出現することです。どの程度が対象になるかは今後明らかになりますが、地域によっては相当の面積になる可能性があります。受託組織の経営は転作作物収入+直接支払い+転作助成金で成り立っていますので転作助成金がなくなると、受託組織の経営が成り立たなくなり、農地を受けることが困難になることも考えられます。

3.営農経済事業の事業戦略 

 事業領域でいえば、JAが「積極的戦略」を展開すべき分野は、農業の労働生産性を向上させる事業分野です。JAが強みのある事業としては①CEやパッキングセンターといった農作業支援、②人材派遣などの労働力支援があります。これらの取組みとあわせて水田地帯では地域の農地を維持するためにも、水田受託組織の支援が重要になります。具体的には受託組織への営農・経営指導のほか、JA自体が出資して子会社化することも検討していく必要があります。

 新技術の導入やみどり戦略の対応についてはJAが主体的に技術開発する場合は少ないので、関係機関と連携した「改善戦略」になります。 JAの直接販売や直売所は他産地や近隣スーパー等との競争があるので「差別化戦略」がポイントになります。生産資材や農機、燃料といった事業についても、競争環境に応じて戦略を検討します。

4.営農ビジョンと財務計画

 JAの営農事業の戦略については、組合員との協議が重要になるので営農ビジョンとして1枚にまとめて説明しやすくします。その中ではビジョンの内容(戦略)のほか数値目標としてKGIやKPIを設定します。また、早期警戒制度もあるので、財務計画への落とし込みも必要になります。

講演資料