1.日 時  令和4年4月14日(木) 13時30分~16時35分

2.場 所 ズーム(オンライン)・録画方式による

3.参加者   主にJA役職員

4.日 程  

時 間        内 容
1330(司会) 東京農業大学 名誉教授 白石 正彦
1330分~1335(開会挨拶) 新世紀JA研究会代表  JA菊池(熊本県)代表理事組合長  三角 修
1335分~1340「解 題」 新世紀JA研究会 常任幹事 福間 莞爾
1340分~1425「JA職員としての心構え~使命と誇り」 JAぎふ代表理事組合長 岩佐 哲司 氏
1425分~1435質疑
1435分~1520  「協同組合とは」 東京農業大学 名誉教授 白石 正彦 氏
1520分~1530質疑
1530分~1540休 憩
1540分~1625「農への思いを大切に」 農業ジャーナリスト・明治大学客員教授 榊田 みどり氏
1625分~1635質疑  
1635閉会

新世紀JA研究会 三角代表 挨拶

ZOOM編集動画

「JA職員としての心構え~使命と誇り」 JAぎふ代表理事組合長 岩佐 哲司 氏

JA職員としての心構え 使命と誇り

1.JAグループの現状認識

 協同組合は、組合員による組合員のためのものであり、組合員は、出資者であり、利用者であり、運営者である。

 協同組合の役職員の仕事は、組合員のくらしの向上を目的として事業を行い組合員の期待に応えること、組合員とともに協同活動を行うことである。今まで我々は、このことを疎かにしてきたように思う。

私は、1983年岐阜市農協に就職した。

当時の私は、組織から与えられた業績目標を如何に達成するかが関心事で、自分本位の推進をしていた。協同組合理念は認証試験だけの知識であり、理念は理念、現実は違うものと勝手に納得していた。

また、組織の中で協同組合について議論が交わされた記憶もない。だからと言って、私の上司たちが協同組合について認識していなかったわけではなく、彼らにとって協同組合の在り方は、当たり前のことであり、わざわざ教育するものという認識はなかったのだろうと思う。

組合の事業の中心は、農業従事者が減少する中で、組合員ニーズに沿って信用事業や共済事業に傾注し、営農経済事業を、脇に置いていたと思う。

バブル崩壊後、気が付けば頑張っても事業は伸びなくなり、理念と現実のギャップはますます拡大していった。我武者羅に事業推進をするなかで、いつしか組織全体が協同組合のアイデンティティを忘れていったように思う。

そして今、JAグループは原点に立ち返ろうとしている。

2.JAグループのあるべき姿

JAグループと株式会社の綱領と対比してみると、以下の2点が相違点のように思う。

一つ目は、社会に役立つという目標に向かうアプローチの仕方が違うことだ。株式会社は、自らのサービスや製品を使って社会に貢献する。というものが多いのに対し、協同組合のそれは、人のくらしにフォーカスし、人と人の関わりを大切することを述べている。 

二つ目は、従業員の働きの違いだ。株式会社の従業員は社員と呼ばれ、利益追求のための合理的な行動を行い、人の暮らしに直接的に働きかける機会は乏しい。これに対し、協同組合の従業員は職員と呼ばれ、労働者であり運動者であり連携者である。プランナーでありコーディネーターである。

そして、組合員とともに豊かなコミュニティを作ることが求められる。

株式会社と協同組合では、着眼点が違うだけで、どちらが正しいうものでもない。現に、松下幸之助氏のパナソニック、本田宗一郎氏のホンダ、稲森和夫氏の京セラなど、素晴らしい経営理念を持った会社は沢山あるが、この違いこそが、協同組合の特徴と考える。

JAは、人と人のコミュニケーションの上に成り立っており、「人の組織」と言われる所以であり強みである。その特徴に立ち返り行動することで、職員も組合員も幸せを感じることができ、その結果として多くの組合員の事業利用に繋がると確信する。だからこそ、仕事は協同活動の実践から始まらなければならない。協同活動を行うことにより対話が生まれ親近感が増し、相談ごとを聞くことができ、そこでの悩み事を総合事業で解決し、組合員の財産、生活の向上が図られる。

新入職員の多くは、人事担当者との面談を通じ、協同組合理念に共感し、共感しないまでも理解し、組合の門を叩いてくれている。私のように回り道をすることなく、協同組合人の入口にいる。大いに期待したい。

3.JAぎふの取り組み

⑴フレームワークの活用

コミュニティの崩壊が社会問題として取り上げられ、世界的な政治経済の不安と相まって、多くの人が自らの暮らしに問題意識を持ち始めているなか、協同組合が、社会の閉塞感を打破する一助になるのではないだろうか。

協同組合は何のためにあるのか、何を目的にするのか、私なりの理解はこうである。

協同組合は、組合員の悩み事を解決する。組合員・職員が物心ともに幸せになる。そして、組合員と職員が一緒になって住みよい地域社会、コミュニティを創ることにあると考える。

しかしながら、組織も個人も、目先の利益に目が行きがちになる。だからこそ、常に自分の行動が組合理念に沿っているか、確認する必要がある。

そのため、我が農協では、役職員の行動指針として、次のフレームワークを活用することとした。

『私たちは組合員の期待に応えるために、支店が中心となり、総合的なサービスをもって、組合員の財産活用とくらしのお手伝いをします。』

全ての役職員は、組織レベル、支店レベル、個人レベルのそれぞれの行動が、フレームワークから外れていないか常に意識しながら行動をしている。

⑵消費者と共に行う農業振興

我が農協の米・畜産以外の農産物の1品目当たりの出荷額は、5~6億円と決して大きくない産地である。一方で、それなりの規模の消費地を抱えた地域でもある。この特性を踏まえ、地消地産に力を入れていきたいと思う。

今までの我々の取り組みは、生産者に向けてのものが中心であり、消費者に対して十分な意識が向けられてこなかった。安心安全な食の提供を目指し、消費者と生産者を繋ぎ、消費者の要望を聞き、作り方などを消費者と約束し契約した農産物を供給する『地消地産』を目指していく。切り口は、有機だと考えている。

その実現のために、先ずは地域の消費者の食に対する意識を醸成することを目的に、今年度、消費者を中心としたコンソーシアムを立ち上げたいと思っている。

4.新入職員へのメッセージ

何度も繰り返すが、我々協同組合の使命は、組合員の相談事を、総合事業を活用して、少しでも暮らしの改善を図ることである。そして、協同組合理念を広め、組合員とともに地域社会の発展に貢献することだと思う。

職員として最も意識しなければならないことは、如何に組合員と良好な人間関係を作るかということだ。信用を得、相手がシンパシーを感じた時、相談事を話してくれるのではないだろうか。当然ながら、問題解決のための相談事業の幅広い知識や、組織や地域ネットワークを活用できるスキルの習得も重要なことである。

組合員から、「ありがとう」と言ってもらった時、他者のためになっていると感じる。これに勝るやりがいはない。これこそが我々の誇りである。

こうした価値観を共有する仲間を増やし、同じ方向に進んでいきたい。

このような活動を継続すれば、何にも恐れることがない強靭なJAグループに生まれ変われると確信している。みんなで、組合員・職員の物心両面の幸せ作りを実現していこう。

「協同組合とは」 東京農業大学 名誉教授 白石 正彦 氏

「農への思いを大切に」 農業ジャーナリスト・明治大学客員教授 榊田 みどり氏