ミニ研究会
今後の准組合員対策~准組合員の意思反映をどう考えるか
1.開催日時
2021年8月23日(月)14:00~16:00
2.開催形式
ZOOMによるオンラインと録画による配信
3.出席者
(1) 実出席者
東京農業大学 白石教授(司会)、JA東京中央 荒川経営企画課長(報告)、新世紀JA研究会常任幹事 福間(課題提起)、同濱田(報告)、農業ジャーナリスト 窪田新之助
(2) ZOOMによる出席新世紀JA研究会 顧問 中原純一
准組合員問題について今検討すべきこと
JA東京中央 総務部経営企画課 荒川 博孝
令和3年3月に規制改革推進会議農林水産業WGメンバーが「JAは矛盾結合体」と発言されていたが、今日のJAはそもそもゼロベースで作り上げた組織ではないことから、設立時から矛盾が内包されていたのだろう。もちろん世の中に矛盾のない組織など皆無だが、矛盾を内包しつつも機能している組織は構成員に対する向き合い方に優れていると思われる。
JAの場合、向き合い方のひとつとして准組合員の意思反映があるが、その意思の捉え方が難しい。
《例:准組合員Aさん》
①事業利用者として=自らのくらしを良くしたい
②JAの構成員として=農業や助け合いを大切にしたい
③地域社会の一員として=地域が豊かになってほしい
断片的な①から③を結合させると「私は、直売所で安全な農産物を購入①することで農家を助け②、その結果として豊かな地域社会③となってほしい」という仮説ができる。
人の意思(想い)は断片的ではない。また、JA職員は日常業務を通じて准組合員のそのような意思(想い)をお聞きしているが、個別にそれを定量化することは難儀である。そこで准組合員の意思(想い)を定量化すべくアンケートを繰り返し行っているが、組合員と職員にアンケート疲れが起きていることも事実だ。
准組合員問題については、このままトンネルの中をさまようのか、トンネルを抜け出すのかを判断しなければならない。しかしながら准組合員問題は、一点から考察しても解はでず、俯瞰すればするほど手の施しようがなくなる。
准組合員問題の決着がJAグループ以外の利益となるならば火中の栗を拾うことになるが、農業振興やJAグループの利益となるならば、ルビコン川を渡らなければならない。
JA全中がこの問題を整理すべきという議論になるであろうが、「情報を持ち過ぎていること」と「その立ち位置」を踏まえれば抜本的な解決策は生まれにくく、問題の掘り起こしとその解のベースづくりは他組織が行うことがベストであろう。
批判を恐れずに申し上げれば、准組合員問題はとってつけたような対策では意味をなさず、問題の本質を掘り起こし、そして解を求め、法令を整理することが解決策であり、いわば矛盾点の改善である。
したがって「総合JAの機能が農業振興に有効であるならばその機能を農協法上の目的として整理し、さらに准組合員の事業利用がその資源となるならば、それも同法上に整理する。」ということを今検討すべきではないだろうか。
※所属組織の見解ではなく、個人の意見です。
<福間問題提起>
1.意志反映(どのような意思を反映するのか)
(1)漠然と農協に対する意志反映なのか(これまで)
全中方針では二つの意思を反映することになる(二軸論)
・農業振興
・地域振興
中途半端、本当に意思反映をすれば農協は分裂する
(2)農業振興の意思反映に絞る(これから)
農業振興の概念を生産者のみに限定しない
サポーターとしての意志反映
2.意志反映の方法
・公式組織(理事会、運営委員会等)
・非公式組織(各種組合員組織、アンケート等)
3.意志反映の効果とその定量化(農業振興への貢献)
・直売所の利用高
・福祉活動の利用高
・信用・共済の利用高とその収益
・その他
4.農水省の指導・監督指針の改定
准組合員の意思反映の内容は特に指導しない
今まで通り、問題の再燃化も懸念
JAにおける意思反映について―准組合員問題前の制度と今後の取組み― 濱田
准組合員の事業利用規制問題に関しては、規制改革実施計画が閣議決定され、次のように官僚支配が強化されることとなった。准組合員の意思反映と事業利用の方針を総代会で決定(Plan)、実行(Do)、実績を踏まえて評価(Check)、方針を修正(Act)するというPDCAサイクルをJAが回し、農水省が指導・監督する。まさに、民間機関たるJAの経営管理サイクルを官僚が点検するという官僚支配の強化としか言いようがない。
これまでの典型的で歴史的に取り組んできた意思反映方法については、JAで組織する各種組織基盤に応じた方法を構築するというもの。
主な組織としては、総代・総代会、理事会、地域や集落に対応した地域独自の運営を行う支所(支店)運営委員会、組合員の直接的な意思反映組織である集落座談会、事業利用に応じた利用者懇談会などがある。これらは、組合員等利用者の多様なニーズに対応した組織である。これらの組織を通じた意思反映以外にも、日常業務を通じた意思反映、組合員等利用者の各種モニター制度を通じた意思反映がある。これらはいずれもこれまでの歴史的取り組みであって真新しいものではない。
一方、JAにおけるトップマネジメントの 3層構造(代表権を持つ組織代表2層と代表権を持たない学経常務による構造)を主体に、理事専門委員会、支所運営委員会などが業務遂行上の意思決定の重要部分を担っていると考えることができる。このような意思決定のあり方は、民主的運営が本質のJAにとって協同組合的特徴を示すものと言えよう。
今後は、准組合員の意思反映の強化策の検討と併せて、全中の弱体化の中にあって、JAの大規模化・県域JAの広がり、統合連合組織の形成、子会社化の動向などを踏まえ、JA全国大会決議等のJAグループ全体を通じた意思決定(グループ的意思決定)のあり方も問われてこよう。