日時 2021年8月30日(月)13:30~15:30 ZOOMにて
司会:東京農業大学名誉教授 白石正彦
挨拶:新世紀JA研究会代表 八木岡努
紹介:JAみっかび前組合長 後藤善一氏
報告:「AGRI SMILEの事業概要と目指すもの」
アグリスマイル 代表取締役 中道貴也氏、マネージャー 高橋さくら氏
参加者
JA秋田しんせい 営農経済部部長北島清
農業経営支援室長渡部治 他3名
JA新みやぎ 営農部長 高橋賢一(欠席)
JA東西しらかわ 営農部次長 薄葉正勝
JA茨城中央会 営農支援センター 皆川副センター長
営農支援室 坂本支援室長、山田審査役
JAちば東葛 指導経済部長 高橋将人
JA東京むさし 専務理事田中一郎、営農指導部長
JAはだの 常務理事(営経担当) 山岸一章
営農販売部長 澤岻 直樹
企画部長 三瓶 壮文
新世紀JA研究会
顧問 中原純一
常任幹事 福間莞爾、濱田達海
AGRI SMILEの事業概要と目指すもの
株式会社AGRI SMILE 代表取締役 中道貴也
AGRI SMILEでは、「耕作することが産業であり続ける世界」というビジョンを掲げ、インターネットとサイエンスのテクノロジーによって、産地の栽培を支援しています。各産地が描くビジョンを産地の皆様とともに実現していくことを目標とし、現在10のJA様とプロジェクトを展開しています。
全国各地の生産者様、JA様をご訪問する中で、「産地の栽培データを適切な形で蓄積し活用したい」「事務作業を減らして作物や生産者と向き合う時間を確保したい」といった声が頻繁に聞かれました。
JA組織をとりまく経営環境や消費者の嗜好の変化、気候変動などにより、各JAが産地の状況に合った施策を打つことが求められていると感じました。そこで、AGRI SMILEでは技術継承やトレーサビリティ、気象データ活用などを担う複数のアプリケーションを開発し、それらを産地のニーズに合わせて提供しています。
弊社が展開する主要サービス3つをご紹介します。1つ目は、栽培技術動画サービス「AGRIsby JA」です。2D / VR動画によって栽培技術を可視化し、オンラインで産地内共有することができます。パート・アルバイト向けの作業解説や、就農者への基礎的な技術指導に加え、篤農家の技術を産地内に普及するプロジェクトも行っています。
AGRI SMILEの動画編集の特長は、農業の知見を持ったクリエイターが編集しているという点です。技術の要点を言語化したり図示したりするノウハウを持っており、動画制作にかかるJA担当者のコミュニケーションコストを抑えつつ、要点の伝わる動画を作ることができます。
また、動画共有システムでは、産地の生産者様に限定して動画を配信できるだけでなく、栽培基礎動画500本の視聴や農薬適用検索、産地の掲示板の機能を利用することができます。栽培基礎動画は、JAとぴあ浜松、JA晴れの国岡山、JAおちいまばり、JAふくおか八女、JA横浜が撮影・監修したものです。
作物ごとの栽培方法だけでなく、畝立てやトンネル張りなどの作業、農業機械のメンテナンス、栽培や衛生管理に関する講義などの動画を揃えています。複数の産地が連携することで、営農指導が行き届きにくい直売所出荷者への指導や、準組合員における農業との接点作りを実現していきたいと考えています。
2つ目は、栽培履歴システム「KOYOMIRU」です。JA晴れの国岡山の生産者、営農指導員の皆様と共同開発し、今年度より若手生産者1,000人が利用を開始します。KOYOMIRUでは、生産者側で圃場に紐づく栽培履歴を作成してJAへ提出、JA側で栽培履歴をチェックするという一連のフローをクラウド上で行うことができます。
さらに、農薬の適用、混用、使用回数を自動判定する機能を搭載しており、生産者側での誤使用防止や、JA側でのチェックにかかる労力の削減に貢献します。JA側の画面では、圃場マップで産地の圃場の状況を一覧することも可能です。
3つ目は、気象データシステム「MIWATASU」です。地点ごとの気温、湿度、降水量、ECなどのセンシングデータを随時閲覧できるだけでなく、積算計算や閾値設定により産地の栽培指標を視覚的に確認することが可能です。従前の気象データ活用においては、センシングデータから作業判断につなげる過程において生産者間・指導員間の経験やスキルの差が出ていました。
MIWATASUでは、JA側で設定した栽培指標のグラフや一定値を超えた際に発せられるアラートが、生産者側の画面にも反映されるようにしています。これによって、産地全体での適期作業や産地防除をサポートします。
以上のように、AGRI SMILEでは組織的に機能する「産地」にフォーカスしたサービスを展開しています。さらに、これらのサービスと生命科学研究を結びつけることで、産地に新たな価値を提供したいと考え、今春、自社ラボを開設しました。
ラボでは、土壌中の微生物叢や植物体の遺伝子・代謝物の解析、食品廃棄物由来のバイオスティミュラント資材の開発・実証に向けた研究を行っています。
将来的には、KOYOMIRUで得られる農薬・肥料の散布データと収量データ、土壌・植物体の解析データを組み合わせることで、管理方法による差を科学的に見出すことができると考えます。また、MIWATASUの気象データと植物体の解析データを対照し、生育環境と植物の状態の相関を捉え、植物の状態を改善するための資材利用(バイオスティミュラント資材を含む)を提案することも可能です。
AGRI SMILEでは、産地の業務をただDX(デジタル化)するだけでなく、活用を見据えた形式でデータを蓄積し、現場のデータと科学的知見を結びつけてPDCAを行えるような仕組みを提供しています。上述のサービスに限らず、インターネットとサイエンスの領域における産地のパートナーとして、課題を気軽に相談していただける存在となれるよう、今後とも邁進してまいります。