27回 新世紀JA研究会・全国セミナー

JA運動の展開方向を問う―

  主催 新世紀JA研究会 共催 JA世田谷目黒

<本セミナーは、本年719日に開催を予定していたものを延期して開催するものです>

1.開催の趣旨

「食料・農業・農村基本法」見直しの状況のもと、JAの基本理念確立第2弾として、「JA運動の展開方向を問う」とする。

2.日 時  令和41215日(木) 1230分~17

(昼食を済ませてご参加ください。セミナー終了後、懇親会を開催します。)

3場 所 〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2―6―2

「日本教育会館」 9階 第5会議室

●実参加とズーム(オンライン)・録画方式の併用

4.参加者  主にJA役職員

5.日 程  

時 間内 容
1230(司会) 東京農業大学 名誉教授 白石 正彦
1230分~1235(開会挨拶) 新世紀JA研究会代表  JA菊池(熊本県)  代表理事組合長  三角 修
1235分~1335「基調講演」 ~農業の基本価値とJAの役割~ 東京大学大学院 教授 新世紀JA研究会 経営塾 塾長  鈴木 宣弘 氏
1335分~1345質疑
1345分~1430JAグループ広報の新展開」 JAグループ茨城 5連共通会長  八木岡 努 氏
1430分~1440質疑
1440分~1450休憩
1450分~1535「都市農業におけるJAの役割」~組合員と共に農地を守る~   JA世田谷目黒  経営管理委員会 会長  飯田 勝弘 氏
1535分~1545質疑
1545分~1615「准組合員対策への提言」 JA東京みなみ  常務理事  志村 孝光 氏
1615分~1630「准組合員対策への提言・解説」 新世紀JA研究会 常任幹事 福間 莞爾
1630分~1640質疑
1640分~1650総合質疑
1650分~17アピール文提案・採択   JA世田谷目黒 代表理事理事長 上保 貴彦 氏
17閉会

ZOOMの編集動画

「基調講演」 ~農業の基本価値とJAの役割~ 東京大学大学院 教授  新世紀JA研究会経営塾 塾長 鈴木 宣弘 氏

講演要旨

深刻化する食料・農業危機と農協の使命 東京大学 鈴木宣弘

日本の食料自給率は、種や肥料の自給率の低さも考慮すると、38%どころか10%あるかないかで、海外からの物流が停止したら、世界で最も餓死者が集中する国が日本だと米国の大学も試算している。

今こそ、国内農業生産を増強しないといけないのに、逆に、国内農業は生産コスト倍増でも農産物の価格が上がらず、コメも生乳も減産が要請され、この半年で、廃業が激増しかねない危機に瀕している。

国の政治が、3だけ主義(今だけ、金だけ、自分だけ)の日米のオトモダチ企業に取り込まれ、農家や国民を収奪しようとしている構造を打破するには、農協、生協、労組などの協同組、共同体的な力が奮起する必要がある。

このまま放置したら、農業が壊滅し、「台湾有事」などで物流が止まれば、国民の食べるものは本当になくなり、飢餓に直面する。農業の壊滅は、すなわち、関連産業も農協も存続できなくなることを意味する。我々は「運命共同体」である。今は、その崩壊の瀬戸際であることを正しく認識しなくてはならない。

「農業滅びて農協栄える」ことなどありえない。「農業滅びて農協も滅ぶ」。「農業消滅」=「農協消滅」である。今こそ、農協組織が組織を挙げて、農家を助け、農業を持続させる「最後の砦」なる必要がある。今こそ、農協の真価が問われる。

小手先の組織いじりで経営収支改善とかを議論している場合ではない。この先半年で、農家の廃業が激増しかねない。農協が赤字になっても、歯を食いしばって耐えている農家、農業を救ってこそ、農協組織の存続につながる。今こそ、本来の農協の役割をしかと認識し、覚悟をもって、動かなくては間に合わない。

農家から預かったお金で維持されている組織が農家が赤字で苦しんでいるときに、還元しなくて、いつ還元するのか。中金、全共連の155兆円の運用資金の農家への還元方法もみんなで提案しようではないか。

お金出せば食料と生産資材が海外から買える時代は終焉した。不測の事態に国民の命を守るのが「国防」というなら、国内農業を守ることこそが安全保障である。防衛費を5年で43兆円にする前に、財務省の縛りを打破して、食料にこそ数兆円の予算を付けられるような「食料安全保障推進法」を超党派の議員立法で成立させるような提案も早急にしていこうではないか。

講演資料(当日使用資料)

詳細資料(113頁あります)

講演動画

「JAグループ広報の新展開」 JAグループ茨城 5連共通会長  八木岡 努 氏

講演要旨

 コロナ禍で行われた昨年秋のJA大会は、過去にないオンライン開催を余儀なくされました。大半の仕事をPCに向かってしているIT業界と違い、JAグループは顔を合わせてコミュニケーションすることを大切にしている仕事が多いため、伝えたい内容をどう伝えればいいのか悩んだ大会でもありました。そこで出した答えが、伝えたい内容をわかりやすく動画にすること、そして広報を強化することでした。

 広報強化を決めたのは、せっかく多くの人が時間をかけて作ったJA大会議案が、作ことが目的化されて、完成したらそれで終わり。結果や効果を追うことも、多忙な日常で忘れ去られているのではないかと感じたことからでした。自分たちがすべきこと、していることをどう周囲に伝えていくかが広報強化に繋がりました。

 JA大会以降、私が人前で話したり書いたりする内容には必ず『持続可能で高付加価値な茨城農業を創る』というJA大会で決めた一文を入れるようにしています。そうすることで組織の方向性を示すようにして、広報から伝えてもらうことのコンセプトや内容も、地蔵可能で高付加価値に沿ったものになっています。

 我々が目指すところ、実現手段は「みどりの食料システム戦略」に沿っています。そこに現在の食料安全保障問題が加わり、環境を維持しながら自国で必要な農作物を作るという、過去に例のない方向に向かっています。このように大きく舵を切るような面では「変わる」必要性を周囲に伝えることが最重要です。

 変化を伝える先は農家、消費者、そしてJAグループ内部です。そのためにグループ・ロゴを変え、HPを全面改訂し、名刺も現代的なものに変えました。スマートで若者のセンスに合わせるのは、持続可能な農業実現のために若手が最優先で重要だからです。SNSの活用も普及していますが、目揃え会や開催済みイベントなど過去情報を全てのSNSにマルチポストするやり方だったので、目的に応じたコンテンツをFacebook、Twitter、Instagramの特性に合わせて発信するように変更しました。過去報告でなく、未来への情報配信をメインに置いています。特に力を入れているのがYoutubeによる動画発信です。

 オンライン広報戦略が軌道に乗ってきたので、次は『クオリテLab』という情報発信基地をJA会館1階に新設しました。誰もが意外と思うインテリアは人を引きつけ、茨城の食と農に関する情報を発信するためのキッチンスタジオの形態をとったことで、いいバランスの情報発信ができています。さらに人と人とが集まるHubとして予想以上に広がりをみせ、新たなアイデアの発想場所にもなっています。

 来年早々に人工芝2面を有するサッカーコート「JAいばらきスポーツパーク」をオープンし、新たな情報発信の場として活用します。教育・宿泊施設を有するので食育の場としても期待しています。

講演資料

「都市農業におけるJAの役割」~組合員と共に農地を守る~   JA世田谷目黒  経営管理委員会 会長  飯田 勝弘 氏

講演要旨

世田谷目黒農協管内は、1964年の東京オリンピックを契機に開発が進み、日本列島改造論の影響もあり、一気に開発が進みました。1973年に市街化区域内農地の内、A農地への宅地並み課税が始まりましたが、当時は全国でも世田谷区の一部にしかA農地はなく、A農地を所有する農家以外は都内の農家でさえ関心が薄く、反対運動は盛り上がらなかったようです。それでも翌年1974年に生産緑地制度ができ、わが家もすぐ第一種生産緑地に登録しました。1976年には、B・C農地にも課税され農協組織もやっと反対運動を始めました。

私が就農した1978年の11月に祖父がなくなり、父が相続しました。農地と自宅敷地の一部を売却して想像を絶する高額の相続税を払い、農地は全て相続税納税猶予の適用を受けたので、国への莫大な借金(相続税の本税・利子税合わせて一〇億円以上)を背負って私の農業がスタートしました。生産緑地制度・納税猶予が税の優遇と思われている事はわかっていましたので、とにかく、後ろ指は刺されないようにという気持ちで農業に取り組みました。

その後、1982年に長期営農継続農地制度,1991年には生産緑地法改正されましたが、30年間の営農義務、納税猶予は終身営農が義務付けられました。2007年に私も父から相続し、気の遠くなるような相続税を払い、農地は終身営農義務を条件に納税猶予の適用をうけました。

当農協は宅地並み課税問題を通じて「農家組合員が第一に農協に求めていることは、安心して農業に取り組める環境づくり」だと確信しました。1984年に相続相談業務を中心とした資産サポート事業を立ち上げ、組合員が安心して農業に取り組める環境を整え、組合員を守り、農業・農地を守る事が都市農協の第一の役割として相談業務を中心事業とした総合事業を進めています。常に組合員目線で相談業務を進め「俺に何かあったら農協に相談しろ」と次世代に言ってもらえる相談業務を目指しています。

相続や事業継承は、全国すべての農家組合員が抱える問題です。相談業務に理解のある全国各地の農協から相談業務の長期研修を受け入れています。最低半年以上の研修ですが、研修費用や住居費用は当農協で負担しています。研修生はそれぞれの農協で相談業務を立上げ、多くの組合員から信頼を得ております。

また、相談業務を補完する事業として、営農困難な組合員の農地での体験型農園運営を事業化し、担い手の確保と農地保全を図っています。

今、総合的な監督指針の改正・早期警戒制度の適用により「持続可能な収益性と将来にわたる健全性」を前提に自己改革が求められていますが、それは各農協が自らの存在意義を明確にし、それに則り地域の情勢・組合員の要望に応える事だと思います。

講演資料

「准組合員対策への提言」 JA東京みなみ  常務理事  志村 孝光 氏

「准組合員対策への提言・解説」 新世紀JA研究会 常任幹事 福間 莞爾

レジュメ

講演要旨