『農協准組合員制度の大義-地域をつくる協同組合のパートナー-』2015年9月25日、農文協ブックレット14、農産漁村文化協会、990円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その44

『農協准組合員制度の大義-地域をつくる協同組合のパートナー-』2015年9月25日、農文協ブックレット14、農産漁村文化協会、990円
チンパンジーは、今更ながらにこの本を手にしました。
増田先生はじめ、協同組合論の先生方がそろって解説しています。敬称略でチンパンジーが知っている著者(他の方々に接する機会がないまま年を重ねました)のお名前を列記すると、田代洋一、増田佳昭、石田正昭、明田作、斎藤由理子ほかの各氏と、現場から(当時の役職名)JAはだの宮永専務、JA庫六甲前田常務ほかの皆さん方です。
それぞれ力が入って解説しています。
石田氏は、経済と社会の二重性としての経済合理性(ゲゼルシャフト)と地縁・血縁の人的関係(ゲマインシャフト)を踏まえると、法改正の強制は農協のアイデンティティを考慮してないという。また、農協改革のゴールは、郵政改革と同じように総合農協の解体、分社化と指摘するなど、チンパンジーも合点。
斎藤氏は、カナダ・ケベック州の農協の事例を紹介。正組合員のほかに、投票権と被選挙権を持つ准組合員と、投票権と被選挙権を持たない補助組合員の3種類の組合員を持つことを紹介。
宮永氏は、准組合員も集落単位に設置した生産組合に参加していること、生産組合が中心になって春と秋の座談会に准組合員が参加する事例を紹介している。
前田氏は、集落機能が低下する中で、職能組合に利害調整を含む総合調整を期待するよりも、地域住民を含む地域の力を借りるべきであり、職能組合と地域協同組合の二者択一ではなく、地域協同組合の中に職能組合は包含(内包)されるとする。
大きな視点から農協を把握するものであり、チンパンジーも賛成するものであるが、世の中の大きな流れとして周囲の利害関係を調整すべきとするステイクホルダーモデルから、世間の動きに逆行して農業者至上主義を掲げるプリンシパル・エージェンシーモデルへ回帰する農林水産省の大きな流れの中で、大きな課題である。
新世紀JA研究会では、事業計画には無かったが現下の情勢に鑑み、准組合員検討委員会を立ち上げて検討中です。また、ご案内することになろうかと思います。