郵政民営化とJA解体?

アメリカ金融資本の攻撃手法と政府の受入手法に学ぶ
ロバート・ゼーリック氏から当時の竹中大臣に宛てた手紙
(第162回国会参議院郵政民営化に関する特別委員会より(要約))
「竹中さんおめでとうございます。あなたは金融大臣としてよいお仕事をされ、それが新しい任務につながったのですね。
この任務を小泉首相が貴方に託した事は我々にとって非常に心強く、貴方には以前と同様の決意とリーダーシップを期待しています。保険、銀行、速配業務において、競争条件を完全に平等にすることは、私たち(米国)にとって根本的に重要です。郵貯と簡保を、民間とイコールフッティング(同条件)にすること、つまり、これらについて今までの税制や保護、政府保証を廃止して、民間と同じ条件にしてほしいのです。具体的には以下について、貴方を後押し致します。
(1)民営化開始の2007年より、郵貯・簡保業務にも民間と同じ保険業法、銀行法を適用すること。
(2)競争条件が完全に平等になるまで、郵貯・簡保に新商品や既存商品の見直しは認めないこと。
(3)新しい郵貯・簡保は相互扶助による利益を得てはならない。
(4)民営化するプロセスの途中に、郵便局には一切特典を与えてはならない。
(5)民営化のプロセスの途中で、米国の業者を含む関連業者に口を挟む場を与え、その意見は決定事項として扱うこと。
これらの改革に取りかかる際、私の助けがいる時は遠慮なくおっしゃって下さい。貴方は立派な仕事をされました。新たな責務における達成と幸運を祈念致します。貴方と仕事をするのを楽しみにしております」
内容は、郵便貯金と簡保の日本国民の貯金340兆円を狙いうちにした内政干渉の手紙。日本のマスコミは「報道しない自由」を行使して沈黙。郵政民営化法案は、心ある議員達によって参議院では一旦否決されるが、その翌日にウォール・ストリートジャーナルは次の記事を掲載。
「これで我々が待ち望んだ3兆ドルは、しばらくお預けだ。が、しかし、小泉総理は頑張るに違いない」
誰も手をつけなかった郵政民営化は、小泉政権下で実施された。2007年に郵便局会社・郵便事業会社・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の4社に再編、2015年に東京証券取引所第一部に上場、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険も同様に日本郵政から株を売り出し。安全な日本国債で国民の資金を運用していたゆうちょ銀行は、アメリカ系企業の株式や債券に投資する比率を上げ、ゴールドマン・サックスの勧めるリスク商品に投資するようになった。
竹中氏を後押しして郵政民営化の実現に貢献したゼーリック氏は、世界銀行総裁、国務長官と出世し、2013年には再びゴールドマン・サックスの国際戦略アドバイザー統括責任者になった。
ウォール街関係者は「小泉総理が郵便局の貯金を差し出し、次に彼の息子が農協の貯金をウォール街に捧げてくれる」という。350兆円の郵便貯金の次にウォール街が欲しいのは、農協の貯金と年金。小泉進次郎議員が熱心に進める「農協改革(解体)」が完全に民営化路線なのは偶然ではない。親子二代でアメリカの金融資本に貢献している。厚生年金と国民年金の管理・運用を行なっているGPIF(「年金積立金管理運用独立行政法人」)の資産規模は世界最大級であるが、GPIFの運用比率が1%上がると1兆円を超える資金が市場に流入する規模。年金は6割以上が、安全な国内債券で運用していたが、2014年10月安倍政権下でGPIFの運用委員会は株式保有率の上限を撤廃し、年金資金を高リスク商品に投入可能に。国内株25%、外国株25%と半分を株が占めるようになり、2015年には巨額損失を計上。損失計上が国民に知らされたのは翌年の2016年7月末。不利になる情報は参議院後まで発表を遅らせていた。2019までの5年間のうち、2年はマイナスを出し、2019年には8兆円の損失を計上。政権支持率を株価に支えられている自民・公明の連立政権、年間数億円単位の運用手数料が入る外資系金融機関。高報酬の人材をウォール街から投入する方針を閣議決定。GPIFが運用を委託する金融機関14社に支払っている手数料は319億円。14社中10社は外資系金融機関。
農協の資金は、アメリカ金融資本のターゲットにされている。
(堤未果「株式会社アメリカの日本解体計画」経営科学出版2021年1月20日52頁)