濱田達海著『JAの経営管理(第7版)』2022年3月16日、JA全中、1,700円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その50

濱田達海著『JAの経営管理(第7版)』2022年3月16日、JA全中、1,700円

チンパンジーが全中時代の2004年3月に初版を書いて以降、その時々の情勢や法改正を反映するべく、18年間改訂を続けてきたものです。内容は、はしがきに端的に記していますので抜粋しておきます。

「本書は、全国JA職員資格認証試験(上級)および農業協同組合内部監査士検定試験の指定教科書として作成したものです。本書では、協同組合論を基礎にした農協論と監査論を主なベースにしながら、まず、1章から2章にかけては、JA経営の特徴を把握するとともに、基礎組織である組合員組織について学びます。3章から5章にかけては、ガバナンス関連として執行体制と牽制機能としての監事の役割、関連する内部監査について学びます。また、内部監査をよく理解するために、リスク管理と内部統制をここで学びます。6章から最終の7章にかけては、経営戦略、マーケティング等の経営管理上必須の事項と経営組織のあり方について学びます。経営資源であるヒト、モノ、カネのうちヒトに関する人事労務管理については、別に作成している『JAの人事管理』に譲っています。JAの管理監督者として、職員を管理する力を身に付けるためにも、本書と併せて学習されることをお勧めします。」(はしがきより)

「環境変化をいち早く読み取り、迅速に行動する企業・組織が「勝ち組」になるという現実のもとでは、JAもその例外ではありません。社会から必要とされる存在であり続けるための努力を怠った組織は、たちまち市場から排除されてしまうでしょう。イコール・フッティングを基準とした規制緩和、高齢化、人口減少の進展など、JAを取り巻く環境変化は、いままでになく激しいものとなっています。JAが、環境変化に柔軟に対応できるのか、その真価が問われるときが来ています。

私たちは、「農業」を主軸とした農業協同組合の原点に立ち返り、魅力ある組織づくりを進めることから始めなければなりません。地域の火付け役となり、活気あふれる地域社会を創造することで、JAを揺るぎない存在感あるものにしていくのです。」(はしがきより)

今回の改訂にあたって色々意を尽くしたつもりで、あちこち抜粋したいのですが、県域JAが多く誕生し子会社経営に苦労されていると思うので、その部分を抜粋しておきます。

「グループ経営の本質は、グループとしての経営理念・戦略を示し、その実現に向けてグループ内の経営資源を最適に分配・管理し、グループとしての企業価値の向上を図ることにある(注19)。

グループ設計を検討する際、法人格の分離については、法人単体がガバナンスの基本単位であることを踏まえつつ、それによるメリット(経営リスクの遮断、成果や責任範囲の明確化、意思決定の迅速化など)と法人としての維持コスト(理事会等の機関設置や理事会の運営等に係るコスト)やグループとしての管理の実効性を十分勘案し、グループ全体の「企業価値」向上と持続的成長の実現に資するかどうかという観点から検討することが大切である。なお、法人格を分離したものの権限委譲が進まない場合には、親子で意思決定プロセスが重層化することで意思決定に時間がかかり、調整コストが大きくなる可能性があることにも留意が必要である。また、経営幹部候補者を育成するため、タフ・アサインメント(困難な課題を割り当てること)の対象に子会社の経営者ポストを活用することが効果的であるとされている(注20)。

子会社は赤字体質でも放置されやすく、管理部門の人数が少なく人事が滞留しがちで不正の危険性が比較的高い。子会社同士の合併により円滑な人事ローテーションを可能にし、ガバナンスの強化に資することができる。

JAの理事会は、業務執行を監督するとともに、グルー プ全体のガバナンスの実効性確保(子会社管理・監督)と子会社における機動的な意思決定を両立させるため、グループ全体の経営方針や事業特性、子会社の規模・特性などにも十分に配慮しつつ、グループ各社の業務執行等に対する適切な関与の在り方(JAの理事会への付議事項や報告事項の範囲等)を検討すべきである。例えば、JAと子会社との適切な役割分担という観点から、コンプライアンス問題など、グループ全体としてのレピュテーション・リスク(企業の評判が悪化するリスク)に関わる案件についてはJAの積極的な関与(集権化)が期待される一方、個々の事業部門における事業戦略に係る事項については迅速な意思決定を重視して権限委譲(分権化)を行う。また、分権化の観点からJAの理事会への付議事項は絞り込みつつ、JAから子会社に対して取締役等を派遣し、子会社の取締役会への関与を通じてモニタリング機能を発揮していくことが考えられる(注21)。

(注19)山田英司・上杉利次 『「協創」のグループ経営』(中央経済社、2016))
(注20)経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」2019年6月
(注21)松田千恵子「グループ経営入門-グローバルな成長のための本社の仕事」税務経理協会、2016」(第7章経営組織 6子会社とグループガバナンス、P178~179)

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