一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)監修『1時間でよくわかるSDGsと協同組合』

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その72

一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)監修『1時間でよくわかるSDGsと協同組合』2019年11月30日、一般社団法人家の光協会、79頁、660円

今さら、SDGsと協同組合かよって思う方もいらしゃると思いますが、改めてJCA監修というこの本を読んでみましたよ。

SDGsの17個のゴールと協同組合の親和性については、皆様も感じられてきたことと思います。監修者も次のように、端的に表現されています。

「SDGsの中には、協同組合の思想がちりばめられている、あるいはICA(国際協同組合同盟)の定める協同組合の定義・価値・原則の中にSDGsを先取りした考え方がいくつも埋め込まれている、ととらえることができます。はっきりとは意識しないまま、協同組合の活動の中で、SDGsの領域に踏み込んでいる場合も多々あります。」(P30)

次の記述について、若干の違和感を感じましたよ。

「国内外の企業がSDGsを上手に活用し、イメージアップやプランディングを図っているのに対し、設立以来SDGsマインドに親和性のある取り組みを続けてきた協同組合は、それが当たり前の活動であるからこそ、発信が控えめなのかもしれません。」(P37)

それだけでしょうか。

2006年に国連が提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)をきっかけに、世界の株式市場において企業の社会的配慮を投資判断に組み込むESG投資が広く浸透し、これにSDGsの取り組みも加わってきています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業に対して行う投資です。環境では二酸化炭素の排出量削減や化学物質の管理、社会では人権問題への対応や地域社会での貢献活動、企業統治ではコンプライアンスのあり方、社外取締役の独立性、情報開示などを重視しています。国連のPRIによって企業の社会的配慮を投資判断に組み込むESG投資が広く浸透するようになってきている訳で、ESG投資を後押しするように、国連が掲げるSDGsの達成に向け、国連が支援するPRIに署名したアセットオーナー(AO)や資産運用機関が、受託者責任(Fiduciary Duty)を果たすため、受託資産の投資にESGを組み入れる動きが拡大している訳です。

 つまり、協同組合企業以外では、公開された株式市場の取引により投資家への利益が提供されることを通じ、取り組んでいる訳です。一般企業は、自社の株価を維持するために必死でSDGsに取り組まざるを得ない訳ですね。一方、協同組合は価値・理念として取り組む訳ですから、よほど取り組みを工夫しないと一般企業の取り組みの後手に回るのではないでしょうか。

これに対して、監修者は次のように述べています。後段で規制改革会議以来使われている「KPI」が出てきたのには、思わず笑いましたが。

「ワークショップを行って、自分たちの組織はSDGs達成に向け何が足りないか、さら強化できることはないかについて総点検しましょう。既存の収り組みの何が活用できるのか棚卸しを行い、大まかな方針を定めます。官言を発表したりプレスリリースをすることも、新たな取り組みを周知・自覚するうえで効果が大きいでしょう。

 その方針にもとづき具体的な施策や行動計画を作成し、経営埋念や中期計画と連関させたKPI(重要業業績評価指標)を立てます。役貝は課題ごとに担当する管理者を指名し、担当者はPDCAで進捗を管理して定量/定性評価を組合員と共有し、具体的なアクションに移行することが大切です。」(P62)

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