蟹江憲史『SDGs(持続可能な開発目標)』2020年8月中公新書2604

チンパンジー

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その4

まず、印象に残った文章を以下に列挙します。

「環境や社会的側面を重視したサスティナブル投資や、 それに企業ガバナンスの側面を加えてそれぞれの英単語(Environment、Social、Governance)の頭文字をとったESG投資への関心は、リーマンショック以降特に高まっているが、SDGsの時代に入りそれはさらに加速化している。日本サスティナブル投資フォーラムによれば、日本国内に拠点を有する    42の機関投資家による2018年3月末のサスティナブル投資合計額は231兆9,522億5,000万円で、2017年の1.7倍に上ったという。2015年9月には世界一の年金運用基金である 「年金立金管理運用独立行政法人(GRIF:Government Pension Investment Fund)が、財務情報だけでなく、ESGのような非財務情報を投資先選定時に考慮することなどを求める国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)に署名した。それ以来高まるサスティナブル投資へ向けた動きは、SDGsにもとづ いた企業評価の動きも促している。ESG投資を行うためには企業がいかにサスティナブルな行動を行っているかを評価する必要があり、その点で企業のSDGsへの対応を適切に測ることが求められているのである。」(23頁)

「目標6:すべての人々が水と衛生施設を利用できるようにし、持続可能な水・衛生管理を確実にする【安全な水とトイレを世界中に】
6・2・1  この指標を盛り込むことに関しては、経営トップが策定過程からSDGsに力を入れていたユニリーバが、 強く絡んでいることが、 明らかになってきたのである。石けんや衛生用品を扱う会社にとっては、 石けんを世界中で使うことは、 衛生状況を向上させながらビジネスを拡大する基盤をつくることにもつながる。 さらには、 指標に盛り込むことで、状況を把撹するためのデータを国連を通じて取ることができるとすれば、ライバル会社の動向や市場の状況を知り、今後の活動を考える情報にもつながるだろう。SDGsの推進とビジネスとを絡めた世界戦略が、そこにはある。」(82~83頁)

「目標12:持続可能な消費・生産形態を確実にする【つくる責任つかう責任】
12・6 企業、特に大企業や多国籍企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう促す。
大企業では統合報告書やサスティナビリティ・レポートを定期的に発行することが常識となりつつある。もちろん報告だけでは十分ではない。しかし、情報を開示し、透明性を増していくことは、対策の第一歩でもある。企業の行動にまで踏み込んでターゲットを掲げたことは、生活に密着した行動を推進するために国連が一歩踏み込んだものとして評価できよう。」(106~107頁)

「金融セクターの動向
2018年ごろからにわかに関心を高め、盛り上がりを見せているのが、SDGsをめぐる金融セクターの動向である。証券会社や銀行、そして日本証券業協会や全国銀行協会といった業界団体が、SDGsの事業への取り組みを前面に押し出し、舵を切りはじめた。2017年にはまだ様子見状態で、「SDGsは本当に定着するのか?」と疑問を呈していた大手銀行幹部も、 翌年には「うちもきちんと取り組むこと にしたよ」と、流れを読んだことを筆者に伝えてきた。もはやSDGs金融の流れは止められな い。
日本サステナブル投資フォーラムが行っている投資残高アンケート調査によると、2014年に8,962億円であった国内投資残高は、SDGsが設定された2015年には26兆6,873億円へと跳ね上がり、2016年以降は56兆2,566億円、2017年136兆5,959億円、2018年231兆9,523億円、2019年336兆396億円と、直近でも前年比約45%増という驚異的な伸びを示している。2018年における機関投資家の総運用資産残高におけるサステイナブル投資の割合も、41.7%まで伸びてきている。
世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、SDGsが生まれたのと同じ2015年9月に、国連責任投資原則(PRI) に署名し、その後GPIF自体がSDGS金融をリードしていることも、こうした動ぎに大きくかかわる。PRIとは、2006年にスタートした、国連環境計画の金融ィニシアティブと国連グローバル・コンパクトのパートナーシップによる投資家イニシアティブのことだ。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance) の頭文字んとったESGに関係する課題と金融業界との関係に注目し、安定的で持続可能な金融、ンステム構築を目指している。その活動の核となるのは、以下の6つの原則へのコミットメントを署名機関に求めている点である。
・投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込むこと
・活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れること
・投資対象企業にESG課題についての適切な開示を求めること
・資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけること
・本原則を実行する際の効果を高めるために協働すること
・本原則の実行に関する活動状況や進捗状況を報告すること
GPIFは、投資家はESG投資を推進し、投資対象となる企業はSDGs達成を目指すことで投資を呼び込む、というコンセプト(図-省略)をつくりあげ、2017年10月に投資原則を改め、さらに2018年からは「ESG活動報告」を始めている。2019年には国連責任投資原則(PRI) の銀行版ともいえる「責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)」が発足し、世界の銀行全体の3分の1程度の資産約47兆ドルを占める131の銀行が署名をした。」(161~163頁)

以上を受けて、チンパンジーの雑感を記します。

1.SDGsは、協同組合の専売特許のように思い込んでいないか。

 19世紀にイギリスやドイツなどで生まれた協同組合は全世界に広がり、1895年には国際協同組合同盟(ICA)が設立され、現在103か国298組織が加盟し、12億人が組合員として参加している。日本の協同組合も農村社会の助け合いをその先駆けとしながら、20世紀から大きく発展し、現在、協同組合の組合員は6,500万人(複数組織への所属を含む)にのぼっている。ICAは、協同組合のアイデンティティ(定義・価値・原則)を「21世紀の協同組合原則に関するICAの声明」(1995年原則)としてまとめ、その中で、自主、自立、参加、民主的運営、公正、連帯という協同組合の価値を実践するため、新たに協同組合の社会的役割の重視と地域社会の持続的発展への貢献を掲げている。国連も、これまでの協同組合の取組みについて総会決議(2009(平成21)年「社会開発における協同組合」)を行い、2012(平成24)年を国際協同組合年と宣言し、「全加盟国並びに国際連合及びその他全ての関係者に対し、この国際年を契機に協同組合を推進し、その社会経済開発に対する貢献に関する認知度を高めるよう奨励」した。また、2016(平成28)年11月には、協同組合が「共通の利益と価値を通じてコミュニティ-づくりを行うことができる組織であり、雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化、再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」と評価され、「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」がユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産として登録された(注1)。
さらに、2015年9月には国連において「持続可能な開発サミット」が開催され、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。これは、「誰一人取り残さないこと」を基本理念として掲げ、人間、地球及および繁栄のための行動計画として17の持続可能な開発目標(SDGs)(注2)と169のターゲットが掲げられた。この中で協同組合は、SDGsの達成にあたり役割を果たすべき民間セクターの一つとして明記されている。だからと言ってのんびりと他人事のようにSDGsを扱っていると、競争する民間営利セクターに大きな後れを取ることになりそう。
JAグループとして、協同組合の社会的役割と地域社会の持続的発展への貢献をSDGsと結び付け活動することが求められている。
(注1)農業協同組合新聞(電子版)2016.12.15号。なお、協同組合のユネスコ登録はドイツが提出したもの。日本政府や主要マスコミが、協同組合に関するこれら一連の動向について、認知度を高め評価する動きをしたとは思えない。
(注2)SDGs17の目標(国連広報センター資料より)
目標1:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ。
目標2:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する。
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。
目標4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する。
目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る。
目標6:すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する。
目標7:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する。
目標8:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する。
目標9:レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る。
目標10:国内および国家間の不平等を是正する。
目標11:都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする。
目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する。
目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。
目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。
目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る。
目標16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する。
目標17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。

2.上場企業におけるSDGs推進の起爆剤

近年は、ESG投資が注目されている。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業に対して行う投資である。環境では二酸化炭素の排出量削減や化学物質の管理、社会では人権問題への対応や地域社会での貢献活動、企業統治ではコンプライアンスのあり方、社外取締役の独立性、情報開示などを重視する。社会的責任投資(SRI)が環境保護などに優れた企業を対象とするのに対し、ESG投資は、環境のみならず、社会、企業統治を重視する投資である。同様な投資として、インパクト投資がある。インパクト(社会的影響)投資とは、経済的利益を追求すると同時に、貧困や飢餓、乳幼児死亡、男女差別、環境破壊といったおもに開発途上国の社会的問題の解決をめざす投資である。具体的には、社会貢献に取り組む国際組織の発行する債券や株式の購入、貧困層へ事業資金を融資するマイクロファイナンス機関のローン債権の購入などである。また、国連が掲げるSDGsの達成に向け、国連が支援するPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)に署名したアセットオーナー(AO)や資産運用機関が、受託者責任(Fiduciary Duty)を果たすため、受託資産の投資にESGを組み入れる動きが拡大している。
このように、SRI、インパクト投資、マイクロファイナンス、ESG投資などの類似した投資が、互いに重複する金融行動を通して、投資家への利益の提供を通じ、持続可能な支援が可能な仕組みとなり、CSRを支える投資活動としてひいてはSDGsの取組みを進める起爆剤になっているものと考えられる。

3.JAグループにおける取組み

JA グループでは、JA全中が SDGs 取組方針を令和2年5月14日に決定している。

(以下、JA全中 SDGs 取組方針 抜粋)

1.JA グループ SDGs 取組方針の策定にかかる基本的考え方
(1) 取り組み方針の位置づけ
〇 SDGsの17の目標は、1つの取り組みを通じて複数の達成を実現するなど、相互に関わりあう内容となっており、JAグループは「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」として総合事業を展開していることから、 各取り組みを通じてすべての目標の達成に貢献できる可能性がある。一方で、その重点や優先的な課題は、各組織の事業や地域の実態等によって異なっている。
〇 そのため、すべての目標の達成への貢献を目指しながら、各組織が各目標に対して、優先的・段階的に他組織との連携も含めて、取り組んでいくことを通じて、JA グループ全体として目標の達成に貢献することを基本とする。

(2) SDGs に取り組む5つの視点
〇 SDGs への取り組みにあたっては、SDGs の趣旨をふまえつつ、JA らしさ、JA ならではの視点をもつことが重要であることから以下の5つに整理した。

① 協同組合の視点から
「相互扶助」の考えのもと「一人は万人のために、万人は一人にために」を基本に運営している協同組合は、「誰一人取り残さない」の理念を掲げる SDGs の実現にあたって重要な役割を担う民間セクターの一員として、国連や政府の「SDGs 実施指針」にも位置づけられている。このため、協同組合として共益の延長で公益に貢献する観点から、事業、活動を通じてSDGsの達成に寄与する。

② 持続可能な食と地域づくりの視点から
JAグループでは、急速な農業者の減少や高齢化による生産基盤の弱体化や、貿易自由化の加速化などの環境変化に対して、わが国の「持続可能な食と地域づくり」を提起し、「食料安全保障」の観点から政策の確立や国民理解の浸透を目指している。SDGs は、こうした考え方と合致するものであり、とりわけ JA グループに対しては「農業」「地域」分野における貢献が期待されている。このため、今後も国内農業・農村を持続可能とするために、農業を起点とした SDGs に取り組む。

③ 新たな成長分野の視点から
SDGsの取り組みは、事業を通じて目標を達成することに重点 があり、企業・団体の本業に結び付いた形での展開がみられる。このためJAグループとしても、SDGs の達成を意識しながら 新たな成長分野への取り組みや、新規事業分野(例:デジタル化や IOT 活用、新技術開発等)への取り組みなどを新たな事業機会と捉え、消費者や取引先などの需要サイドと継続的・長期的な関係強化に結び付ける。また、流通・小売業態がSDGsへの対応を進めることに伴い、長期的な取引関係の継続など事業基盤の確保に向けた取り組みとしても SDGsの取り組みを進める。

④ 地球的共通課題(環境問題等)への対応の視点から
気候変動に代表される地球環境問題は、農業における生産力の減退や大規模自然災害等による直接的な被害の重大化だけでなく、信用・共済事業などの金融関連事業においても大きな影響が想定される。このため、組合員の生産基盤や地域社会を持続可能にする観点から、農業が環境に及ぼす影響を認識したうえで、農業にかかる環境負荷の軽減に取り組み、その「緩和と適応」に留意した取り組みを検討する。また、将来的なリスクだけでなく、既に毎年のように発生している災害への対応として、気候変動等への適応として減災・防災の取り組みを進める。

⑤ 取り組みの「見える化」と積極的な情報発信の視点から
SDGs は企業・消費者など社会全般にその言葉・概念の認知が広がりつつあり、持続可能性への配慮を示す共通言語となりつつある。このため、JA グループ共通の取り組み方針のもと、それぞれの組織・団体が SDGs の達成に関連する事業・活動の取り組みを「見える化」し、積極的な情報発信を行うことを通じて、JA グループの組織イメージ(レピュテーション)向上に資する。

2.JA グループ SDGs 取組方針
〇 SDGsの経済・社会・環境の3側面にもとづく17の目標、169 のターゲットの実践にあたっては、「食と農を基軸に地域に根ざした協同組合組織」である JA の特性をふまえ、以下の3つの分野、6つの取り組みに整理し、その取り組みを通じて、JA グループはSDGs で目指す目標を達成していくこととします。

〇 なお、取り組み分野は JA 綱領とも親和性が高く、JA グループにおける基本的な価値を共有するものと考えます。

<取り組み①>持続可能な食料の生産と農業の振興に取り組みます。
〇 SDGs に貢献する活動の一義的な目的としては、全ての国民に対する安定的な食料供給を行うことで食料安全保障の確立に寄与することであり、そのために JA グループとして不断の自己改革の取り組みを通じて、生産基盤の重要な要素である担い手の確保・育成と農地の保全・活用につとめます。

<取り組み②>持続可能なフードシステムの構築に取り組みます。
〇 SDGs の達成に向けては、農業生産・産地における取り組みだけでなく、流通段階や小売段階等においても環境負荷や資源効率を意識したバリューチェーン展開や消費行動の推進が必要です。

〇 水やエネルギー等の資源効率の良い生産技術や資材の普及、並びに、出荷規格や商品パッケージ等の省資源化を通じて、とりわけ生産段階で発生する資源の消費を抑制します。

〇 また、JA ファーマーズマーケット(農産物直売所)の活性化など、生産された農畜産物の流通・販売段階でも資源消費を抑制します。

〇 さらに、「みんなのよい食プロジェクト」の推進等により、消費者等に対して持続可能な消費行動(フードロス削減、エシカル消費など)を推進し、消費段階での資源消費の抑制や環境負荷の軽減を図ります。

<取り組み③>農業生産における環境負荷の軽減に取り組みます。
〇 農業が環境に負荷をかけるネガティブな側面を鑑み、地域実態等に応じて環境負荷の軽減に配慮した農業生産の仕組みを目指します。その農業を推進することで生態系の保全に寄与します。

〇 農畜産物の生産に必要な肥料・農薬・飼料の使用に際して、使用前後での周辺環境・器具等の点検や使用量の確認などの使用基準の遵守を徹底し、使用に伴い発生するプラスティックゴミの廃棄や違法な焼却を防止するなど、環境及び人体への影響に配慮した生産資材の適切な処理を促すための営農指導を行います。

〇 また、生産資材以外にも、土壌の質的劣化並びに土壌流出や耕作放棄地の抑制など、土壌の保全を通じた環境への影響にも配慮した生産を促します。

<取り組み④>農業のもつ多面的機能を発揮していきます。
〇 都市農村交流や都市農業の推進を通じて、緑地・公共スペースへの消費者等のアクセスを容易にし、経済・社会・環境などのあらゆる分野において都市と地方との良好なつながりを創出します。

〇 農業・農村は生産面だけの機能ではなく、洪水・土砂崩れ防止機能、水資源涵養機能、大気調整機能、生物多様性保全機能、稲作等日本文化伝承機能、体験農業等学校教育の場、田園風景形成機能など環境面・文化面での様々な機能を有しており、その保全に寄与していきます。

<取り組み⑤>安心して暮らせる持続可能で豊かな地域社会づくりに貢献していきます。
〇 地域にくらす組合員・地域住民に対して地域に根ざす協同組合としての役割を積極的に果たしていきます。

〇 地域の存続に不可欠な店舗の運営や移動販売車の運行等を通じて、生活 基盤が脆弱な環境下にある消費者等が基礎的サービスにアクセスできる機会を確保します。

〇 また、高齢者福祉事業や健康管理活動など様々なサービスの提供を受ける機会を確保します。

〇 農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する農福連携の取組みについて、JAもその支援を行っていきます。

<取り組み⑥>国内外の多様な関係者・仲間との連携・参画につとめます
〇 地域で暮らすすべての人が生きがいをもって共に成長し続ける社会に貢献します。

〇 女性の運営参画や民主的な意思決定によるアクティブ・メンバーシッ プの推進、また、協同組合や商工会、地方公共団体等、地域な多様な組織とのパートナーシップを通じて、地方創生に取り組みます。

4.JAにとってのSDGs取組みのメリット

 JAグループがSDGsに取り組むメリッ トは何だろうか。

① 人材育成・活性化
・若手職員の活性化
・優秀な人材の確保

② 協同組合間提携の促進
・協同組合グループの共通目標の検討

④新商品・サービス開発
・地域住民へのJAグループの理解促進
・価格競争の回避

JAグループにとっ てSDGsへの取組みは、必ずしもすぐに販売高や利益に結び付くものではない。しかし、協同組合理念を持つからこそ、社会貢献、環境改善にも寄与するというSDGsを柔軟に推し進めやすい。地域社会、地域経済を支えるJAグループは、SDGsの目標達成に欠かせない重要なプレイヤーになり得るのではないか。民間営利セクターがESG投資により、積極的にSDGsを推進しないと自社株の価値が下がりかねないという危機意識のもとで、否が応でも取り組みを強化せざるを得ない中で、我々協同組合と非営利セクターには出資金の価値を決める市場もなく、SDGsを経営の中に意識して取り込まない限り民間営利セクターに後れを取ることになりかねない。
SDGsを経営に導入する方法の1つとして、「SDGsコンパ ス」がある。SDGs 浸透をリードする代表的な組織が作成に携わった世界共通のツールで、SDGsコンパスは多国籍企業に焦点をおいて開発されたものであるが、必要に応じて変更してこの指針を使用することが期待される。SDGsを身の丈に合った形で活用できるマニュアルやツールの開発が期待される。
2020 年3月頃より、国内で新型コロナウイルス感染症による経済・経営面への影響が拡大し、JAグループにも甚大なダメージを与えている。しかしその中でも、社会や地域の課題と向き合い、新型コロナウイルス禍を乗り越える事業活動により地域社会の信頼を獲得したJAも多いのではないだろうか。経済、社会、環境の基盤を揺るがすような事件、事故、自然災害等が生じてから考え始めるのでは遅く、日常の経営や事業に取り入れることが肝要であろう。SDGsは、地域社会と向き合うSDGs経営への取っ掛かりにすぎない。

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