日本の農林水産業が世界を変える

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その12

本田浩次著、2021年4月、株式会社飛烏新社、1,650円
本田浩次(ほんだ•こうじ)の略歴は、次の通り。「昭和19年、埼玉県生まれ。東京大学経済学部卒。昭和43年に農林省(現・農林水産省)人省。」北海道農務部次超、農林水産省構造改善事業課長、農林水産省食食品流通局長・畜産局長などを歴任。現在は農林水産業業活性化構想研究会代表、有限会社楽市研究所会長を務める,趣味はウォーキングで、平成6年~ 令和2年の27年間の歩数は1憶2564万歩にも上る。PPK (ピンピンコロリ)研究会の話動に取り組む健康評論家。」(表紙裏の著者紹介より)
とある先輩から紹介された本で、2時間もあれば読むことができる。通読した所感は、畜産を中心とする耕畜連携の成功物語が多かったという印象。水田でホールクロップを栽培し、畜産の飼料として利用する。家畜の糞尿は最新技術で肥料化し田畑に還元する。地域内で有機物が循環する。成功している企業のターニングポイントが興味深く紹介されている。第2章と第3章で併せて18社の成長物語を知ることができる。
第2章で農林水産業をリードする活構研会員として、7社の取組みが紹介されている。活構研とは著者の本田氏が代表を務める「農林水産業活性化構想研究会」の略称である。
① 有限会社瑞穂能城/代表取締役会長・下山好夫
② 有限会社ワールドファーム/経営企画室室長・櫻井勇人氏一
③ 株式会社有機産業/代表取締役・鈴木一良氏
④ 株式会社林養魚場/取締役会長・林慎平氏
⑤ 日本きくらげ株式会社/取締役社長・山田正一朗氏
⑥ 一般社団法人S.1.Net会/代表理事・松尾信弘氏
⑦ 株式会社ノベルズ/東京事務所所長兼畜産販売統括・延与猛氏
また、第3章地方創世のカギを握る会社として、次の12社が紹介されている。
① 一般社団法人地域再生医福食鵬連携推進支援機構/理事・事務局長伊藤譲氏
② 株式会社トゥー・ワンプロモーション/堂業部副部長・両角拓也氏
③ 株式会社恵和ピジネス/営業本部東京営業部・佐藤英之氏
④ メデイアブリッジ株式会社/代表取締役CE0・辻茂樹氏
⑤ 合同会社EARTH21/代表社員・川城剛氏
⑥ KE環境衛生ピジネスバートナーズ/代表・亀井良祐氏
⑦ 株式会社エスシーアクト/代表取締役・渡邊光彦氏
⑧ 株式会社BCM/代表取締役・深澤文夫氏
⑨ 株式会社ショーワ/代表取締役社長・齊藤純一郎氏
⑩ 南洋興発株式会社/代表取締役・大山雅彰氏
⑪ JapanGinger株式会社/西村政晃氏
⑫ 株式会社シュリンプバートナーズ/水田健人氏
例によって、最後にチンパンジーの印象に残ったところを紹介しておきます。
「(田村)いまも都市化が進んでいて、そういった批判は年々強くなっています。地方の活性化に農業の活性化は欠かせませんが、その農業が批判されるようになってしまった。これでは地方は疲弊する一方です。
(本田)そのとおりです。農業に力を入れている町は元気で、元気な町には子供がたくさんいます。ただ、そのような町はごく一部です。地方からは仕事が減り、人も減っているのが現状です。日本はいま、少子高齢化と人口減少に直面しています。その大きな原因は東京一極集中の社会構造と地方の衰退にあります。これが日本が抱える最大の問題だと思っています。昨今、少子化対策として、子育て支援や待機児童の解消を訴える政治家がたくさんいます。確かにこういった対策も必要でしょう。しかし、地方に仕事があれば若者は地方で働き、地方で家庭を築きます。そうすれば地方は活性化して子供の増加にもつながります。それを実践している町もあります。
(田村)近年の政治家は都会の声ばかり優先させています。その大きな理由は、選挙制度が変わったからです。1996年の第41回衆議院議員総選挙から小選挙区制が導入されました。小選挙区制は人口に比例した制度です。これを機に東北6県の議席数は26議席に減り、いまではさらに3議席減り、23議席になりました。現在は25議席ある東京より少ないのです。だから選挙になると、都市部の有権者を意識する候補者が増えました。当然、当選後は都市部の人が喜ぶ政策を実行することになります。」(序章 特別対談・田村重信(政治評論家・元自民党職員)P27~28)