緊急提言 パンデミックー寄稿とインタビュー

チンパンジー

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その17

ユバル・ノア・ハラリ著、2020年10月、河出書房新社、1,430円

著者は、ユバル・ノア・ハラリという歴史学者。1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号取得。現在、エルサレムのヘプライ大学で歴史学を教えている。「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その9で紹介した『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福-』(上・下巻、各2,090円、河出書房新社、2016年9月)の著者と言った方が理解が進むでしょうか。

グローバルな協同と科学を信じることが分かり易く説かれている。
例によって、印象に残った記述を抜粋しておきます。

「新型コロナウイルス感染症の大流行は、公民権の有効性の一大試金石なのだ。これからの日々に、私たちの一人ひとりが、根も葉もない陰謀論や利己的な政治家ではなく、科学的データや医療の専門家を信じるという選択をするべきだ。もし私たちが正しい選択をしそこなえば、自分たちの最も貴重な自由を放棄する羽目になりかねない‘ 自らの健康を守るためには、そうするしかないと思い込んで。」(コロナ後の世界、P47)

「2008年の金融危機や2014年のェボラ出血熱の大流行といった、これまでのグローバルな危機では、アメリカがグローバルなリーダーの役割を担った。だが、現在のアメリカの政権は、リーダーの仕事を放棄した。そして、人類の将来よりもアメリカの偉大さのほうをはるかに重視していることを、明確に示してきた。この政権は、最も親密な盟友たちさえも見捨てた。EUからの入国を完全に禁止したときには、EUに事前通告さえしなかった。この思い切った措置について、EUと協議しなかったことは言うまでもない。そして、伝えられるところによれば、新しいCOVID~19ワクチンの独占権を買い取るために、あるドイツの製薬会社に10億ドルという金額を提示したとのことで、ドイツを呆れ返らせた。現政権が最終的には方針を転換し、グローバルな行動計画を打ち出したとしても、その指導者に従う人は皆無に近いだろう。なにしろその人物は、責任はけっして取らず、誤りは断じて認めず、いつもきまって手柄は独り占めし、失敗の責めはすべて他人に負わせるのだから。
アメリカが残した空白を埋める国が出てこなければ、今回の感染症の大流行に歯止めをかけるのがなおさら難しくなるばかりか、その負の遺産が、今後長い年月にわたって国際関係を毒し続けるだろう。とはいうものの、危機はみな、好機でもある。グローバルな不和がもたらす深刻な危機に人類が気づく上で、現在の大流行が助けになることを、私たちは願わずにはいられない。
人類は選択を迫られている。私たちは不和の道を進むのか、それとも、グローバルな団結の道を選ぶのか?」(コロナ後の世界、P53)

「この危機が過ぎ去っても、私たちはあっさり以前の状態に戻ったりはしません。
進歩するものもあるでしょう。今や新しいツールがあふれるほどありますから。その一方で、危険もあります。たとえば、雇用に関しては大きな危険があります。大学は、もうオンライン講座を開けるのだから、地元の教授陣に莫大な給料や手当や年金などを支払う代わりに、社会保障もすることなく、その10分の1の費用でインドで誰かを雇えばいいという判断を下すかもしれません。そのほうが、ずっと安上がりです。このような危険があるのです。」(緊急インタビュー 「パンデミックが変える世界」、P79)

「この危機に伴う大きな問題のーつは、リーダーシップの欠如で、それはここ数年間の出来事の結果です。2014四年にエボラ出血熱が流行したときと、2008年に経済危機が起こったときには、今よりはるかに優れたグローバルなリーダーシップが見られました。アメリカがグローバルなリーダーの役目を引き受け、アメリカを中心に多くの国が結集し、最悪の展開を防ぐことができました。
ところが、この三、四年の間に、二つのことが起こりました。第一に、アメリカがグローバルな指導者の役割から身を引き、自己中心的になりました。自国のことばかり考え、他の国々のことは頭にない「アメリカ・ファースト」 です。今やアメリカには友はなく、利害関係があるだけです。」(緊急インタビュー 「パンデミックが変える世界」、P104~105)

「戦争や闘いや勝利という比喰は脇に置き、世界中の人々が適切なケアを受けられたら成功となるでしょう 世界中の人々をウイルスの拡散から守ることができたら、そして、世界中の人々をこの危機に伴う経済的苦難から守ることができたら、成功となるでしょう。もし自分の国の人だけを守り、他の国々が完全に崩壊してしまったら、私はそれを成功とは呼ばないでしょう。」(緊急インタビュー 「パンデミックが変える世界」、P108)

「人類はもちろん、このパンデミックを生き延びます。私たちはこのウイルスとは比べものにならないほど強いし、過去にもこれよりはるかに深刻な感染症を何度も生き延びてきました。今回も生き延びることに疑問の余地はありません。
この感染症が最終的にどんなインパクトを与えるかは、あらかじめ決まっているわけではなく、私たち次第です。この危機がどのような結末を迎えるかは、私たちが選ぶのです。もし選択を誤り、ナショナリズムに基づく孤立主義や独裁者を選び、科学を信用しないで陰謀論を信じることを選べば、歴史に残る大惨事を招くでしょう。何百万もの人が命を落とし、経済は危機に陥り、政治は大混乱になります。
逆に、もし賢い選択をし、グローバルな連帯や民主的な責任を選び、科学を信頼することを選べば、そのときは、たとえ死者が出たとしても、苦しみが引き起こされたとしても、後から振り返れば、この危機は人類にとって素晴らしい転換点だったことが見て取れるでしょう-ウイルスを克服した節目だっただけではなく、私たちが内なる魔物たちを打ち負かした節目だったように。憎しみを乗り越えた時点、錯覚や妄想を乗り越え、真実を信頼し、以前よりはるかに強く、はるかに統一された種となった時点だったと思えることでしょう。」(緊急インタビュー 「パンデミックが変える世界」、P109~110)

「私は科学に頼ることで恐れを克服しています。つまるところ、もし私たちが科学を信頼すれば、この危機を容易に乗り越えることができるでしょう。反対に、もしあらゆる種類の陰謀論に屈してしまえば、私たちの恐れが煽られるだけで、人々は不合理な行動に走るでしょう。つまり、心を開き、科学的で合理的な目で状況を眺めれば、私たちはこの危機を脱する道を見つけられるのです。」(緊急インタビュー「パンデミックが変える世界」、P111)

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