つながリ志向のA経営-組合員政策のすすめ-

チンパンジー

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その21

増田佳昭編著(序章、第3章、終章共著)、2020年9月、一般社団法人家の光協会、2,200円

増田先生は、現在日本協同組合学会の会長の重職を担っている。「立命館大学経済学部招勢教授。滋賀県立大学名誉教授。専門は農業経済学、農協論、農産物流通論。著書に『規制改革時代のJA戦略』(家の光協会)、「JAは誰のものか』(編著、家の光協会)、「制度環境の変化と農協の未来像』(編著、昭和堂)など。」(編著者紹介より)

他の執筆者は(いずれも執筆当時)、小林元(一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)主席研究員)、西井賢悟(JCA主任研究員)、阿高あや(JCA副主任研究員)、岩崎真之介(JCA副主任研究員)、小山良太(福島大学食農学類教授)。

横やり無謀な准組合問題についての規制改革推進会議の答申(2021年6月1日農協改革の実施事項部分抜粋)を参考に、掲げます(勝手なことを相変わらず言っております。JAは官僚支配の玩具に成り下がりましたか。)官邸官僚と財界の結託審議会の答申が閣議決定され執行されます。

(規制改革推進会議答申抜粋)
a 農水省は、農協において、組合員との対話を通じて自己改革を実践していくため、以下の自己改革実践サイクルが構築され、これを前提として、農水省(都道府県)が指導、監督等を行う仕組みを構築する。
(Ⅲ)准組合員の意思反映及び事業利用についての方針(准組合員の意思反映に関する仕組みを明確化するとともに、事業利用について、組合員が具体的な利用状況を把握した上で、農業者の所得向上を図るとの農協改革の原点に立って判断するものとして定める)→各JAの判断で方針を作成し、総会で決議

この本で取り上げられている主なJAの事例は、JAふくしま未来、JA兵庫南、JAあいら、JA三重中央など。この本は、准組合員問題が焦点になり始めた時にアンケートを中心に現状分析をして検討したもの。准組合員問題についても提言している。例によって、幾つか抜粋しておきます。

「JAが協同組合であるということは、人と人とのつながりがその基底に存在するということである。JAではそうした組合員同士のつながりを基盤にして、JAと組合員とのつながりが形成されている。組合員のつながりは、伝統的には農村社会における集落を単位にした地域的なつながりであったし、商業的農業が発展するにしたがって、品目別部会組織などの機能的なつながりが重要性を増すようになってきた。しかしながら、その後農業を取り巻く環境が変化し、組合員の世代交代が進むにしたがって、地縁的つながり、機能的つながりは弱まらざるを得なかった。また、その後JAとのつながりの弱い准組合員を多数迎え入れており、かれらとのつながり形成も重要な課題となってきた。のちにみるように、協同組合がその目的を適切に達成するためには、組合員とのつながり強化は必須の条件である。組合員の性格の分化、組合員の世代交代という新しいJAの段階にふさわしい組合員とのつながりのあり方が間われているのである。」(序章 組合員とのつながり強化をJA経営政策の柱に-JAの組合員政策試論-、P9)

「アクティブ・メンバーシップの図をみると、向かって右側に准組合員のステップアップ戦略が描かれている。准組合員に対しては、「食べて応援」から「作って応援」というステップアップを描き、農業振興の応援団として位置づけることを提起している。
「食べて応援」は、「直売所で地元農産物を購入、農業まつり、支店まつり」など不特定多数型活動であり、間口の広い出発点となっている。「作って応援」は、「体験型農園、直売所への出荷」など特定少数型活動であり、農業により関わる准組合員像が期待されている。そのうえで、「地産地消」実践者の拡大によって、准組合員を農業振興の応援団と位置づけた。
もちろん、准組合員の位置づけは、それぞれの環境に応じてそれぞれのJAが位置づけるものであり、あくまでJAと准組合員のつながりの形のーつの提起である。
同時に、それは、農協改革のなかでの准組合員の事業利用規制に対応した取り組みでもある。農協改革の議論のなかで、『農業協同組合新聞』の取材に応じた農林水産省経営局長が、准組合員の位置づけとその意思反映について、「まず、(中略)自分たちで考えて社会に提案すべき」と発言している。」(第1章 JAと組合員のつながりの歴史的な変容と組合員政策、P39)

「農業者組合員と非農業者組合員(元農家や准組合員)という2つの主要組合員グループを抱える大規模JAにおける内部組織のあり方として、JA兵庫六甲が参考になる。同JAでは、「農業振興と環境保全」「くらしと文化の創造」 の二つを「兵庫六甲のめざすもの」として掲げ、それに対応して営農とくらし、それぞれの事業本部を設置し、信用共済部門は後者のなかに位置づけてきた。つまり、事業特性で事業本部を分けているのではなく、組合員のニーズと課題によって内部組織を分けているのである。事業指向でない組合員指向、課題指向の内部組織構築といえるだろう。」(第3章 JAの多様性と組合員政策、P102)

「JA小松市のように、まずは「支援」に徹するなかで集落組織の活動自体の活発化を促す必要があるだろう。「参画ありき」 ではなく「活動ありき」で基礎組織への対応を考えるべきである。 ~(中略)~事業と直接的な関係を持たない属性別組織という意味では、そのほかに高齢者の組織や農業の担い手の組織なども想定することができるだろう。後述のテーマ別活動組織と重なる部分もあるが、属性を意識した組織化は組合員政策のーつの視点である。~(中略)~女性という属性の括りは、共働きが当たり前となり、ライフスタイルが多様化している今日において大きな意味を持ちえないのではないだろうか。子育て世代、親の介護が必要な世代、元気高齢者世代などのように、女性の属性を細分化して捉え直す必要があるだろう。

属性別組織政策の検討に当たっては、多くのJAにおいて女性部が議論の対象となるはずである。そのさいには、先の基礎組織と同様に「活動ありき」を追求する、あるいは女性を一括りにするのではなく、その属性を細分化して捉え直す、これらが対応の基本方向となるだろう。(終章 組合員政策をどうすすめるか、P200~201)

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