高嶋哲夫著『E V イブ』2021年9月18日、株式会社角川春樹事務所、1,870円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その53

高嶋哲夫著『E V イブ』2021年9月18日、株式会社角川春樹事務所、1,870円

高島さんの略歴を抜粋すると、1949年岡山県生まれ、慶応の工学部卒・大学院修士を経て日本原子力研究所へ。カリフォルニア大学留学後作家に転身し、『メルトダウン』『首都感染』など著書多数とのこと。

EUは2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年と比べて55%削減し、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げた。

そのため、2035年以降の新車販売を排気ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするとし、ハイブリッド車を含むガソリン車やディーゼル車の販売を事実上、禁止し、脱炭素の取り組みが不十分な国からの輸入品に関税を課す「炭素国境調整措置」と呼ばれる措置を導入するとしている。

このよう状況の中、フィクションとして日本において経産省自動車課のキャリア官僚がハイブリッドから電気自動車(EV)への転換を図ろうと奮闘する物語である。

ステラの社長が登場したり、トヨタ、スバルと思われる自動車会社の社長も登場し、面白く読めた。日本のハイブリッド技術が高度で欧米が追い付けないことから、脱炭素を名目に一挙に電気自動車へ転換し、日本の自動車競争力をそぐという世界戦略があらわになる。

読んでいて、2006年に国連が提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)をきっかけに、世界の株式市場において企業の社会的配慮を投資判断に組み込むESG投資が広く浸透してきたことや、2015年の17の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットを想起すると、色んなことが世界戦略の一部として動き始めていると感じさせられた。

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