『JAのための収益認識基準の会計実務』2019年12月2日、編著者みのり監査法人、株式会社清文社、223頁2,860円

「チンパンジーの笑顔」雑読雑感 その58

『JAのための収益認識基準の会計実務』2019年12月2日、編著者みのり監査法人、株式会社清文社、223頁2,860円

最近の大きな会計基準変更の一つが、この収益認識基準の変更です。グローバルに活動している企業の比較可能性確保のために世界基準に合わせて採用されたわけですが、国内事業を専らとする総合JAにとっては、迷惑な会計方針の変更ではないでしょうか。しかし、これも一般に公正妥当なる会計慣行ですから、これに従うためには、収益認識を変える必要があります。

設例が豊富です。購買事業12事例、販売事業5事例、利用事業3事例、その他経済事業10事例、信用・共済事業6事例です。事例にあたらないとなかなかピンと来ない収益認識です。

チンパンジーが選んだ抜粋掲載しておきます。

「2021年4月1日以降開始する事業年度の期首から、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指」(企業会計基準適用指針第30号)が適用されることになりました。わが国ではこれまで、企業会計原則の実現主義の考え方を基本として収益認識に関する会計処理を行ってきましたが、これに関する包括的な基準はありませんでした。そこで、国際的な会計基準との整合性を図るため、IFRS 第15号「顧客との契約から生じる収益」をもとに開発されたのが本会計基準です。

本基準は、般に公正妥当と認められる会計基準であることから、JAにも当然に適用されることになります。JAが行う業務はさまざまであり、各業務に係る収益認識については、会計慣行及び業界慣行を考慮のうえ収引の実態に合わせて個別具体的な判断をすることが求められます。今後は、本基準に従って会計処理を行うこととなりますが、JAが扱う業務のl広さから、その影響も広範囲になるものと思われます。ただし、「金融商品に関する会計基準」及び保険法における定義を満たす保険契約等については、本基準の適用範囲外です。したがって、影響が人きいのは。主に「経済事業」に関係する処理ということになります。本書では、この「経済事業」に関する会計処理を中心に解説していますが、加えて、総合JAが多い実態を考慮し、信用事業・共済事業の主な収益認識に関する事例も設けています。

本書は、本基準がJAの会計実務にもたらす影響の大きさ(IFRSを基本とした原則主義的な内容となっており、具体的な処理方法の記載があまりないこと)に鑑み、できる限り理解しやすく、具体的な事例をもとに実務に直結した解説を行うというコンセプトで執筆しました。

構成としては、まず第1章で収益認識に関する基準の全体的な説明をし、第2章でJA特有の取引例をもとに具体的な会計処理を解説しています。」(はしがき)

「出荷基準とは、売主の倉庫・工場などの敷地から物品を顧客に配送移動した時点で売上計上する売上計上基準の一つです。収益認識基準の基本的なコンセプトである「資産の支配の移転」とはいえません。

一方、一般事業会社などでは、この計上基準で売上計上しているケースが散見されます。このような現行実務を配慮し、国内における販売で、出荷・配送に要する日数が数日間程度であれば、厳密な「資産の支配の移転」時点(通常、着荷基準)と比べて、重要な差異が生じていないと捉え、代替的な取扱いとして認められています(収益認識適用指針98項、171項)。

なお、離島JAにおける島外販売がある場合、期末直前で甚大な自然災害などがあった場合は、出荷・配送に要する日数が通常の国内販売と同程度かどうか確認したうえで、出荷基準を採用できるか確かめることが肝要です。」(第2章 第1節購買事業、77頁)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA